配管系統の
マスアンドエネルギーバランス
基本アルゴリズムとプログラム

著者 : 酒井善治 技術士(電気部門)
ISBN4-88538-501-6 C-3054
出版社 : テクノ
出版年 : 1994
価格 : ¥6,000(税込 *1)

配管網の圧力および流量の定常状態を求める問題は種々の工学的局面に現れます。この問題の古典的な解法としては「Hardy-Cross法」が知られています。しかしながらこの方法は、「圧力が流量のN乗に比例する」と言う非線型性の為に収束性が良くない上に、系統内に圧力/流量調節弁等が有ると適用不可と言われています。

本書では非線型電気回路網の解析で用いられている「Tableau-Formulation」に準じ、圧力と流量を未知数として定式化を行い、これを「Newton-Raphson法」による繰り返し計算で解く方法を紹介しています。この方法によれば上述のような系統内に圧力/流量調節弁がある場合や、さらにオープンチャンネルを含む様な場合でも、何ら問題無く統一的な手法で解を求める事が可能になります。

また大規模な系統を解析するには、次数の大きな疎行列を効率良く解く事が必要不可欠になりますが、本書ではこの為のスパースマトリクスのプログラムについても具体的な説明がなされています。
本書で紹介するアルゴリズムは、著者の開発した「ウォーターハンマー解析プログラム(HYTP)」の前段処理(定常解析)で使用されているものです。


*1:著者に直接申し込まれた場合は¥5,000(消費税、送料込)です。
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目次と内容の一部紹介

1 はじめに 2

1.1 マスバランスプログラムの開発目標 3
1.2 アルゴリズムの概要 4
1.2.1 求めるべき未知数は何か. 4
1.2.2 未知数が決まれば,未知数の数だけ方程式を立てる. 5
1.2.3 組みあがった連立方程式を解く. 7


2 プログラムの全体構成と外部デ−タの定義 8

2.1 ブランチデ−タ 9
2.2 ノ−ドデ−タ 14
2.3 圧力,流量調節弁デ−タ 15
2.4 ポンプデ−タ 15


3 基本アルゴリズム 16

3.1 高速化のポイント 16
3.2 問題の定式化 18
3.3 ヤコビ行列の組み立て 23
3.3.1 Aグル−プのヤコビ行列 24
3.3.2 Bグル−プのヤコビ行列 26
3.4 残留誤差ΔFの計算 28
3.4.1 Aグル−プの残留誤差 28
3.4.2 Bグル−プの残留誤差 29
3.5 圧力,流量調節弁が存在する場合 30
3.5.1 問題の定式化およびヤコビ行列のパタ−ン 30
3.5.2 圧力,流量調節弁のヤコビ行列の組み立て 32
3.5.3 圧力,流量調節弁の残留誤差ΔFの計算 34
3.5.4 外部-内部のクロスレファレンス 35
3.6 修正量の計算 36
4 初期値の算出 38
4.1 線型系と非線型系 38
4.2 疑似線型系としての解 40
4.2.1 質量流量と配管抵抗の概算 40
4.2.2 ポンプヘッド,リザ−バ−圧力 41
4.3 各ブランチを流れる流体の種類判別法 42
5 ブランチ,ノ−ドの圧力損失,圧損変化率 44
5.1 ブランチ部分の全体ル−プ 44
5.1.1 直管の圧力損失 46
5.1.2 曲管の圧力損失 49
5.1.3 バルブの圧力損失 54
5.1.4 オリフィスの圧力損失 55
5.1.5 一般化圧力損失要素 57
5.1.6 拡大縮小の圧力損失 58
5.1.6.1 拡大 58
5.1.6.2 縮小 58
5.1.7 オ−プンチャンネルの圧力損失 62
5.1.8 ポンプヘッド 75
5.2 分岐,合流部の全体ル−プ 78
5.2.1 Tおよび非対称Y分岐,合流部の圧力損失 84
5.2.1.1 T合流部の圧力損失 87
5.2.1.2 T分岐部の圧力損失 89
5.2.1.3 非対称Y合流部の圧力損失 92
5.2.1.4 非対称Y分岐部の圧力損失 98
5.2.2 対称Y分岐,合流部の圧力損失 102
5.2.2.1 対称Y合流部の圧力損失 106
5.2.2.2 対称Y分岐部の圧力損失 108
5.3 リザ−バ−の圧力損失および圧損変化率 110


6 スパ−スマトリクスのサブル−チン 114

6.1 ノンゼロ要素の格納方法 114
6.2 スパ−スマトリクスのLU分解 123
6.3 LU分解結果を用いた連立一次方程式の解 132
6.4 使用例 134



1 はじめに

本書のタイトルである「マスアンドエネルギ−バランス」という言葉について,馴染みの薄い読者のために簡単に説明をしておこう.
マスバランス(Mass Balance)を直訳すれば質量平衡を意味するが,流量バランスと訳した方が馴染みやすいかも知れない.一般にシステム内の各機器が設計点にて運転されることはまれであるし,また各機器が標準設計品の組み合わせであれば,個々の設計点とシステムの設計点は一致しないのが普通である.したがって,実際の運転状態によって,システム各部の圧力および流量がどのように変化するかを調べることが必要となる.
この状態の時間的変化を扱うプログラムは Plant Simulator と呼ばれるが,マスバランスでは最終定常状態のみを扱う.

一方,エネルギ−バランス(Energy Balance)は,ヒ−トバランスとか熱平衡と言われることもある.例として図1.1にガスタ−ビンと蒸気タ−ビンを組み合わせて発電を行うシステムを示すが,エネルギ−バランスはシステム各部の圧力,流量に加えて温度分布を調べることである.圧力,温度から流体の物性が決定されるので,流量に熱容量を掛ければエネルギ−の流れを知ることができる.エネルギ−バランスも最終定常状態のみを問題とする.

実際の現象としては圧力,流量,流体の物性が相互に絡んでおり,全てを同時に求めるのは簡単ではない.たとえば物性が変われば流量が変わり,これによって温度分布が変化するのでまた物性が変化する...という具合に続く.

この複雑な現象を解析する手法を説明するのが本書の目標であるが,まず比較的簡単なところから手をつけるという意味で2分冊とし,「その1 非圧縮性流体のマスバランス」では流体を非圧縮性に限定し,また温度分布は一様という条件のもとに圧力,流量分布を求める方法を紹介する.
第2分冊の「その2 圧縮性流体のマスアンドエネルギ−バランス」ではこの限定条件を取り除き,圧力,流量,温度分布を求める方法を説明する.但し,化学反応は扱わない.

図 1.1 系統例 コンバインドサイクル