今回の話は、タイトルの通り、戦後百年したときの体制の話です。言うまでもないですが、ほとんどが僕の捏造設定ですので、間違って刷り込まれないようにしてくださいね。大陸全部考えるのは面倒なので、パレスだけに限定します。本来なら裏裏あたりが適当なネタですが、まぁ、たまにはいいでしょう。 まずは、英雄戦争直後のアカネイアの体制の設定をまとめておきます。
アカネイアは、王家が消滅したため、五つの公爵領に分割され、その五公国の連合として生まれ変わります。そのとき、パレスは、いずれの公爵領にも含まれない独立した都市とされ、一代限りの暫定として、ジョルジュが「パレス公爵」となりました。といっても、ジョルジュはパレスを「領地」として持っているわけではありません。パレスは誰の領地でもないとされたのです。ただし、ジョルジュの収入は、パレス市民の税金で賄われました。これは、ジョルジュの独立性を保つために必要な措置でした。
パレス公爵とは一体何をしていたかというと、他の五人の公爵の取りまとめ役であり、また、実質的にアカネイアの国主代理でした。とにかく戦後のアカネイアは、誰が何をどうしていいのか分からないほどしっちゃかめっちゃかでしたので、ジョルジュが、権限はほとんどない上に薄給で、そのくせ責任だけはやたらに重くて、しかも下手をしたら他の公爵や過激派の市民や旧政権の残党に命を狙われるという、どうしようもない役職(貧乏籤)を買って出たのです。権限は、実はほとんどありませんでした。パレス以外のアカネイアは、5人の公爵に統治権があるのです。ジョルジュができることは、パレスの市政の他は「新しいアカネイアのビジョンを見せる」ことだけだったのです。そう、それだけでした。だから「パレス公爵」だなどという仰々しい肩書きのくせに、たった一代限りという奇妙な限定がついているのです。そんな役職、継がせるだけ無駄ですから。…え?実権がないのに、なぜ取りまとめ役が務まったか、ですって?それは、ジョルジュ自身の知名度と気迫がなせた業です。
そしてジョルジュは、自由騎士団を作り、アカネイアの公爵達の意見を取りまとめ、マルス他各国の代表(王とは限らない)と良好な関係を築き上げ、新しいアカネイアはこういうものだというイメージを、徐々に国民…いや、大陸全土に浸透させていきました。という前提の上で、ジョルジュが引退した後、つまりジョルジュがビジョンをつくることに成功した後のパレスが、結局どうなったかを語るのが、今日の企画です。
まずパレスの領地問題ですが、引き続きどこの領地でもない独立都市と定められました。
パレスの政治運営は、民間から選出された市長のもとで行われます。ただし、市長の選挙権は市民にはなく、パレス最高評議会を構成する11人の委員にのみあります。ただし、評議会の委員のうち7人は、市民が直接選出できます。他の4人は、自由騎士団と大学が2人ずつ枠を持っていて、それぞれの組織の中で選ばれます。日本では国会議員は国民が選挙で選べても首相を直接選ぶことはできませんが、それと似たようなものです。市長の任期は特になく、自ら引退を宣言するか、評議会の9人以上が不信任を表明した場合、あるいは裁判で重大な有罪となった時以外はずっと職にとどまることになります。
パレス市長の権限(同時に責任)は、パレスの行政に関する全般と、五公爵の取りまとめ、各種国際会議への「出席」です。アカネイアの外交の権限は、直接には五公爵だけにあります。ただし、公爵間で意見が割れたりした時などには調停を行うことになります。並大抵の人間では勤まりきらない調整能力を要求されるので、一過性の人気で市民から直接選出されないような仕組みになっているのです。…なるときはなるということは、重々わかっていますけれど。市民の生活に視点を移しましょう。
自由騎士団は治安の維持に極めて重大な役割を果たし、パレスは世界一安全な都市という定評を得るまでになりました。アリティアの王都アンリは、良くも悪くも開放的なので、都市は闊達ですが、犯罪の件数はある程度以下には下がらないようです。
また、自由「騎士団」という名称ではとても収まりきらないほどのサービスを行っています。街道の護衛などは割と名称に近いサービスで、手紙や荷物の配達(大陸全土、どこでも)、銀行業、生命保険、住居斡旋、職業斡旋、その他とにかく生活に関することをもろもろ行っています。さすがに巨大になりすぎている感があるため、業務ごとに組織を分割する案も出ているようです。また、組織の運営は、発足時がそうであったように、騎士団長一名と副団長二名が執行部となり、引退時には彼らの協議によって後任が決まることになりました。もちろん、不慮の事態になった場合の対処はまた別にあります。また、自由騎士団とともに、もう一つパレスで特徴的な組織として「大学」があります。元はマリクが起こした「魔道学院」でしたが、教えるものが魔道に限らなくなってきたので、名称が変更されました。魔道以外には、医学、数学、文学、天文学、歴史学、そして法学の講座と研究室があります。医学と天文学は、アリティア歴30年代半ばに旅の錬金術師が持ち込んだ知識を元に、急速に発展したと記録にあります。なお、錬金術そのものは、魔道に組み込まれました。大学の学長はチキで、永年学長となっています。ただ、そろそろ永年「名誉」学長にした方が良いのではないかと考えているようです。
法学は、ジョルジュが晩年に心血を注ぎ込んだもので、パレスには大陸で唯一の「権力者から独立した裁判所」が存在します。裁判官の身分は完全に保証されており、パレス市長も裁くことができます(最高裁判官も、理由があるなら、下位の裁判官に裁かれることがあります)。ただし、当然ながら立法権は持たされていませんし、パレスから一歩でも外に出たところで起こった事件を裁く権限もありません。もっとも、どんな場合でも参考意見を表明することは自由であり、重大事件が発生した時にパレス裁判所が表明する参考意見は、常に当事者に影響を及ぼしています。他には、ミディアの弟子が設立した「料理学校」、評議委員の一人であったユリウスと魔道学院(当時)の理事サダルが後押しした「芸能組合」、パレス公爵夫人の後押しによる「全世界孤児救済協会」、アリティア大公爵にして宮廷司祭アルフェラッツの援助も出ている「奨学基金」などが、パレスを特徴づけるものとなっています。
特徴的なイベントとしては、年始祭があります。もともと大陸全てで行われている祭りではありますが、かつての自由騎士団副団長アストリアが新しいイベントの開催に熱心で、騎士のトーナメントや競馬、闘犬、農産物コンテスト、綱引き、花火大会などイベントが目白押しになり、それが毎年恒例となりました。
このように、戦争から百年経って、パレスは人が安心して芸道や学問に精進できる都市となり、やはりアカネイアの中心地であるという認識が、ほとんどの人に根付いています。
とまぁ、こんなのが、僕の脳内設定です。
…え?この文章に出てきた人名らしき固有名詞に意味不明のものがある、ですって?面倒なので、いちいち解説しません。分かる人には分かるでしょう。