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ビッグボクシング対談 | ||
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世界バンタム級1位 村田英次郎
梶原 : 英次郎こそ“あしたのジョー”だ |
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“スポ根”の原作者として天下無類の梶原一騎が、惜しくも世界戦を分けた 村田英次郎と「熱い男の世界」を熱弁。ジャブあり、右ストレートありで またたく間の3時間。英次郎は“あしたのジョー”と五分に渡り合った!! | |
梶原 |
しかし何だね、2回世界戦やって、2回連続引き分けというのは、これはおそらく ボクシング史上初めてじゃないかな。 |
村田 |
初めてです。 |
梶原 |
でも、惜しかったなあ。ラスト・ラウンドになって、チャンドラーが
バーンとすっ飛んだでしょう。あの時はいけると思ったんだけどね。
やっぱりクリンチで逃げられちゃった。そういえば、ジェフ・チャンドラーと
いうのが、昔ハリウッド・スターにいたな、たしか西部劇の。 |
村田 |
自分でも気に入ってます。よく、リング・ネームと間違われるけど、これ 本名なんです。初めのころ、名前が自分でもカッコよすぎてテレてたとこが ありましたけど。 |
梶原 |
村田君はどこの生まれ? |
村田 |
生まれたところは石川県です。それで京都で育って、今は滋賀県です。 |
梶原 |
いま何か仕事をしているわけ? |
村田 |
いや、自分は何もやっていないです。 |
梶原 |
まあ、そうだよな。あそこまでいきゃボクシングで食えるよな(笑) でもね、 日本て国は世界チャンピオンでないとなかなか食えない。じつに面白い 国なんだよね。 |
金子 |
ほとんどボクんとこのジム番して食ってましたね。まあ、英次郎は私の傑作中の 傑作ですね。 |
梶原 |
ボクシングをはじめたキッカケは? |
村田 |
京都にいる時分に、まだ小学6年生ですけど、ウチの近くにボクシングのジムが あったんですね。そのときに父から「ボクシングやってみないか」ということで...。 |
梶原 |
お父さんが? |
村田 |
そうです。 |
梶原 |
珍しいな。だいたい親というのはボクサーになることに反対するもんだけどね。 ウーン、そりゃ珍しいよ。 |
村田 |
父としては、ボクがあまり付き合いのいい子供じゃなかったから、ああいうみんなの いるところに出して、とにかく社交性をもたせようとしたらしいんです。 |
梶原 |
社交性のためのボクシングか。まあ、変わったというか、そのくらいボクシングが
認知されてきているんだ、いまは。 |
金子 |
ホント、そのものズバリいわれましたよ。ウチのオヤジに。ウチは八百屋だった もんで、オヤジも世間体を思って八百屋の小僧の修行に出してるんっだってことで、 ジムに通わせてくれましたけど...。 |
梶原 |
ところで、試合の前に控室にいるときなんか、やっぱり少しは緊張する? |
村田 |
そうですね。今回はもう何も考えなかったですね。相手のことも何も。 |
梶原 |
ウチのジムにいる高山(元全日本ライト級チャンピオン高山将考氏)なんか、 控室にいると、過激派が爆弾でも仕掛けてくれて試合が中止にならないかなと 思うんだって(笑) |
村田 |
それは同じですね。何かとんでもないアクシデントでも起きて...でも、リングに 上がってしまうともう平気です。ただもうやるしかないと思いますよ。 |
梶原 |
お酒はイケるくち? |
村田 |
ぜんぜん飲まないです。飲みたいとも思いません。 |
金子 |
飲みたいといったって、殺したって飲ませませんよ(笑) 酒、タバコをやったら ボクサーとしては終わりですよ。 |
梶原 |
同じ世代の若い連中をみてどう思う? |
村田 |
こういってはなんですけど、いまはとにかく世界チャンピオンを目指しているから、
規制された生活も苦になりません。 |
梶原 |
そこなんだよね。よくアメリカでもって、不良青年だった奴が少年院に入って ボクシング覚えて、それでボクシングを通して更生するという話があるでしょう。 あれは当然なんだよね。これは酒飲んでたらすぐ負けるし、タバコ吸ってたら 息がすぐ切れて負けるんだから。ついでに夜遊びすればコンディション狂わすしね。 だから、ボクシングほど非行に青少年対策にいいものはないとボクは思ってるんだ。 |
村田 |
そうですね。ボクシングほど過酷なスポーツは他にはないし、私生活が崩れたら モロに試合に出るのがボクシングだと思います。 |
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矢吹丈の大ファンで「あしたのジョー」を見てボクサーに... | |
梶原 |
この前、具志堅がブッ飛ばされたときに、あるスポーツ紙のインタビューでも いったんだけど、これから何日後に結婚するって奴が情容赦なくブチのめされ ちゃうってのは、ボクシングだけがもつハードさとクールさだね。 |
村田 |
そこんとこのハードさがボクは好きなんです。 |
梶原 |
相撲なんかだったら、まあ、ご祝儀で負けてやったり(笑) プロレスだったら 百発百中勝つわな。このへんの厳しさが男どもを惹きつけるんだね。やはり、 「キング オブ スポーツ」だよ。だから私も『巨人の星』はじめ書いてきたけど、 書いてて一番熱が入ったのは『あしたのジョー』だったからね。 |
村田 |
そうですか。そういえば『あしたのジョー』の人気も衰える気配がありませんけど ...。 |
梶原 |
そうなんだよ。ついこのあいだ『あしたのジョー』の前売券を出したら、5000人も 並んだって。これはズバ抜けた記録だってんで、ひょっとしたらギネス・ブックに 載るかもしれないと思っているんだ(笑) ホント、われながらアキレかえったよ。 |
村田 |
ボクは矢吹丈と力石の熱烈なファンなんです。ボクをはじめとして、梶原先生の 『あしたのジョー』を見て、ボクサーになろうとした青少年は数えきれないんじゃ ないでしょうか。 |
梶原 |
ちょっとテレくさいな。でも、英次郎クンの2回連続世界戦引き分けも、 なんとなくギネス・ブック的だと思うけどね(笑) |
村田 |
いや、そういことではなくて、キチッとボクシング史上最強のバンタム級 チャンピオンとして名をとどめたいですよ、やっぱりボクは。 |
梶原 |
ところで、酒、タバコと聞いてくりゃ、最後はやっぱりオ・ン・ナ。あのコ、いいコだ と思うことぐらいはあるだろうね。 |
村田 |
そりゃありますよ。しょっちゅうあります。 |
梶原 |
有名になると当然女は寄ってくる。女って奴は、どこかの国の偉い奴というよりは、 とにかく腕っぷしの強い者にひかれるようにできてるんだね。 |
村田 |
・・・。 |
梶原 |
女優さんでいえばどんな人が好き? |
村田 |
吉永小百合さんとか、ああいう感じの人が断然いいですね。 |
梶原 |
ああ、あんなオバンが好きなうちはまだ大丈夫だ(笑) |
金子 |
英次郎の場合は女のファンが多いからちょっと心配ですけど、5年は 辛抱してもらわないと。それで地位と名誉を得れば、一生のパスポートを 得たのとおんなじですから。 |
梶原 |
まあ、女も目先の女でガマンしちゃダメだね。このへんの、このくらいの女で いいやと妥協しちゃうと、ボクサーとしては強くなれないな。女もピンから キリまであって、ひとつひとつ階段をのぼるようにもっといい女、もうちょっと マシな女と考えていかなきゃ、“ハングリー・スポーツ”の名が泣くよ。 |
村田 |
ボクサーは、あらゆる意味でハングリーじゃなくちゃいけないんですね。 |
梶原 |
そうだ。具志堅だって、ガンバッテあんなに立派なカアちゃん
もらったんだから(笑) |
金子 |
そりゃ仕方ないですね。 |
梶原 |
だから、あんまり早い時期に女房もらうのはどうかな...。ボクシングは なんといっても命がけのスポーツだから。 |
村田 |
肝に銘じておきます! |
2度も王者と引き分けたのはキミもチャンピオンということ | |
梶原 |
村田君のいまの夢は? |
村田 |
一日も早くチャンピオンになって、防衛をうんと重ねておカネがたまったら、父が やっているような中華料理店を持ちたいと思っています。経営とか、料理なんかは 自分にはなんにもわかんないから、ぜんぶ父に教えてもらわないといけないですね。 |
梶原 |
まあ、それにはなんとしてもチャンピオンになることだね。だって、二度にわたって 王者と引き分けたとういうのは、彼らと同じ力、つまりチャンピオンの力があることを 証明しているのと同じだよ。 |
村田 |
力が同じじゃ意味のない世界ですからね。圧倒的に強くなくっちゃ世界チャンピオンと
はいえない。 |
梶原 |
チャンドラーもそうだったけど、キックとか空手の世界で黒人とやると、 黒人というだけで何か威圧感があるんだな。強そうな感じがすると。そういう 感じって、村田君でもある? |
村田 |
正直ってありますね。もう、黒人って当たり前ののことだけど、全身真っ黒でしょう。 その黒い全身の中に目だけが異常に白くみえてギラギラしているようで、やっぱり “黒い恐怖”って感じですね。 |
梶原 |
相手をダウンさせたときの気持ちっていうのは、どんな状態? |
村田 |
もう立ってくれるなとか、ヤケにカウントするのが遅いなって気になりますね。 |
梶原 |
オレなんか素人考えで、相手をブチ倒してさぞかし征服感にひたってるんだろうなと 思っちゃうけど...。 |
村田 |
そうでもないです。いまにも、ノビちゃってる奴がいきなり起きあがってきて、 凄い形相で立ちむかってくるんじゃないかという恐怖妄想がありますね。 |
金子 |
私なんか、むこうが早くタオルを投げてくれないかと、そればっかり祈ってますよ。 で、タオルが投げ込まれると、これもう、これもうきっと神様がくれたタオルだと 思うことにしてるんです。 |
梶原 |
それだけ、ボクシングは恐怖のスポーツだということだ。それだけ恐怖の試合を やった後はドッと疲れが出てあとはグッスリ? |
村田 |
でもないですね、これが。終わった後は眠れないですね。もう興奮状態が ずっと続いていて、結局寝るのはあくる日の夜からなんです。脳なんかにも 何発か喰らってるわけです。その衝撃が鎮静するまでは、体は眠たくとも脳ミソが 寝かせてくれないんです(笑) |
梶原 |
考えてみればそうだね。クルマのムチ打ち症でウーンウーンしてる人が大勢いるのに、
直接頭に何百キロ級のダメージを受けてへっちゃらなわけがないな。 |
村田 |
なんてったって、頭をボケにされるのが一番怖いです。 |
梶原 |
顔がヤラれるのは仕方ないとしても、頭がヤラれちゃ嫁さんの来てもなくなるしな (笑) |
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「村田英次郎物語」をかいてもらえるような偉大な男になる | |
梶原 |
村田君のいままでの戦績は? |
村田 |
21戦18勝3引き分けです。」 |
梶原 |
3引き分け? もうひとつの引き分けって? |
村田 |
韓国の選手とです。 |
梶原 |
ダウンを喫したことは? |
村田 |
ありますよ。アマチュアのときに。アマチュアでは88戦やったけどダウンは それ1回きり。 |
梶原 |
ダウンさせられたときの気持ちは? |
村田 |
はっきりいってあせりますよ。で、カーッとするな、あとは“落ちつけ、落ちつけ” “気をつけろ、気をつけろ”と自分にいいきかせるんです。カーッとしたところで いったら絶対にやられますから。チャンスを待とう、クリンチで逃げても、 ここはジッとガマンしていこう、と体にいいきかせるのにホネが折れます(笑) |
梶原 |
フーン、さすがにプロフェッショナルはクールだね。ところで、打たれて効くのは どこ? |
村田 |
もちろん顔面の腹も効くけど、あるていどは鍛えられていますからね。 |
梶原 |
オレは案外と目じゃないかと思うね。だって、150キロの熊みたいな大男でも、 指をチョンと当てただけで身動きできなくなっちゃうから。ゴミが入っただけで 涙ボロボロ、目というのは最大の急所だよ。“タマ”のつくところは気をつけなくちゃ ダメだ。メン玉、キン玉(笑) |
村田 |
そこばっかしは鍛えようがない(笑) |
梶原 |
とくに下のほうをやられちゃったらボクサーもクソもないよな。なんてったって オトコとして生き甲斐がなくなる。 |
村田 |
その意味でチャンピオンとオトコのどちらかを取れといわれたら、 これはむずかしいな。 |
梶原 |
さしものチャンピオン・ベルトも“泣く子”のは勝てぬ、か。 |
金子 |
チャンピオンになれば3200万円ぐらい。それに宿泊料もいっさいがっさいぜんぶ プロモーター持ちですよ。 |
梶原 |
なるほどね。どの世界もそうだけど、この世界はとくにチャンピオンにならなければ、 あとは鼻クソみたいなもんだなァ。 |
村田 |
そのために、酒もタバコも...慎んでるんです。 |
梶原 |
そう聞くと、ボクサーのチャンピオンってやっぱり“傷だらけの栄光”だな。でも 村田君、キミならできる。キミなら『あしたのジョー』も成しえなかった 世界チャンピオンにきっとなれるよ。ガンバレよ、英次郎! |
村田 |
先生に『傷だらけの栄光』 村田英次郎物語を書いていただけるようガンバります! |