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■シナリオA-2

薄暗い、モニターと機械端末がズラリと並ぶ部屋に男が音もなく入室した。
「どうだい、首尾よく事は運んでいるかい?」
蒼い鎧を纏う男が、部屋のモニターを睨みつけていた少女に話しかけた。
「いえ。貴方様が仰られた通り一筋縄では…。」
少女は背に生える多数の腕を操り、周囲に展開されている全てのシステム端末に命令を入力させ始めた。
「強制移動を行います。“神界”に彼らの世界の一部を斬り取り、貼り付けます。」
少女の御付きの者達の動きが慌しくなる。
関係各所に指令を送り、混乱を最小限に抑える事が目的である。
「あらら…。何をそんなに慌ててるの?アリスちゃんったら。」
蒼い鎧の男にもたれかかるように、黒衣の女性が姿を現した。
手には大量の綿雨が握られて。
アリス「時代は代わります。次代に悪い膿を渡すわけには参りません。」
アリスと呼ばれた少女は(多数ある)手を止め、男と女の方に向き直った。
その顔には決意がにじみ出ていた。
「ほう。神の世代交代があるだけだと俺は踏んでいるんだがね。」
蒼い鎧の男は左顔半分を覆う包帯をなでつつ、悪態をつく様に言い放った。
言いたい事はただひとつ。時が代わっても上は替わらない。何も変わりはしない、と。
アリス「承知しています。だからこそ、彼らを招くのです。ファイディ・クロノとレイク・アインズバーグという、現代に現れた特異点を。」
「ふうん、ファイディ君が特異点…ね。何を根拠に?」
綿雨をほおばっていた黒衣の女性の手が止まった。それまでの表情から一変、何かを探求する者の顔に変わる。
アリス「ファイディ・クロノは北の大国を壊滅させた“翡翠の光”の渦から生還した唯一の存在。つまりは最凶の闘氣と呼ばれる“神殺し”を封じる事が出来る稀な存在として記録されています。」
「最凶の闘氣…ねぇ。北の大国を崩壊させた本人2人を目の前に良く言えたもんだ…。」
蒼い鎧の男は大きくため息をひとつつく。
アリス「あ…いえ、けして悪気があって…。」
アリスが困った顔をしたと同時に大きく、誰かのお腹の虫がなり始めた。
黒衣の女性がお腹を抑え、蒼い鎧の男のマントの裾を引っ張る。
「ま、どうでもいいじゃん。たった“それだけ”の事であの子達を戦いの世界に引き込む事になっちゃうわけなんだけどさ。」
「…運命なんていい加減な言葉では済まさないさ。あの子が戦う事を拒否したならば、さっさと返してやって欲しい。戦い方を教えた者の親心…ってヤツかな?」
蒼い鎧の男はアリスに踵を返して見せた。
アリス「あの、どちらに?」
「ん〜。お腹空いたから帰るわ。あの子達が来て、姿見られるわけにもいかないしねー。」
黒衣の女性がそう答えると、自動扉が開かないうちに蒼い鎧の男と黒衣の女は姿を消してしまった。
まるで、ワープを行ったかのように、かき消えてしまったのだ。
「それに、今の今まで放置していた“我が子”会うわけにもいくまい?」
部屋のどこからか、青い鎧の男の声が響き渡った。
アリスは大きくため息をつくと、端末にさらに多くの命令を入力した。
多数あるモニターは、色々な世界を、時間を映し出していた。
その全ての世界、時間からファイディと同じような特異点をピックアップし、全てに強制移動を命令していたのだ。
「アリス様、間もなく議会開催の時刻にございます。」
「判っております。…コスモ様、貴方様は何をお思いなのですか…?」
タイムキーパーに促され、アリスは端末群から離れた。
そして、部屋の入り口に控える男女に命令を発した。
「現最高神、アリス・ポルフォールとして命じます。リュシファ、フォスファ。ファイディ・クロノがこちらに到着したらすぐにこの場に出頭させなさい。」
後ろに控えていた男女が、押し黙ったまま大きく頷いて見せた。
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