003/荒野


 通り抜ける風と共に舞う灰色の砂には、大量の放射性物質が含まれている。
 世界が泥沼の戦争を始めて、20年。休戦調停を結んだのが、半年前。この小さな星には、30発以上の核が打ち込まれた。生き残っているのは、1万人にも満たないと言う。
 戦争を始めた政府のお偉いさんたちは、今でも地下シェルターで次の策を練っているとか。そんなことをする前に、地上で生き残った人間を助けようとは思わないのか。
 60億もいた人間が何の抵抗も出来ないまま苦しんで死んでいったのに、諸悪の根源である政治家たちは今ものうのうと地下でいい暮らしをしている。お前たちが死ねば、俺たち一般市民は死ななくてもすんだのに―――こういう考えは間違っていると知っているけれど、そうとしか思えないし、思ってしまう。
 灰を吸い込まないように顔の半分以上を支給されたマスクで覆って、辺りを見回すと、360度地平線が見えた。ところどころ、忘れ去られた残骸が影を落とすだけで。
 赤銅色の太陽が、何もない地面を照らす。巻き上げられた大量の土が作る分厚い雲が、今日は珍しく晴れている。
 久しぶりのひかりに目を細めると、外套の下の銃器の感触を確かめた。これから、本当に戦争を終わらせに行く。


(2005/05.24 497文字)



核戦争が起こる前に日本人が絶滅してそうだと思うのは私だけでしょうか?



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