004/マルボロ


 あなたとするキスが好き。
 ちょっと苦めのマルボロのにおいが好き。
 苦いけど甘い。
 それって、キスっていう甘味料のせいかしら?


「何にやけてんだよ」
「別にィ」
「気持ち悪いなー」
「ホントに気持ち悪いって思ってるの?」
「思ってる。」
「……酷いなあ、」
 くすくすわらうと、彼はその大きな手であたしの頬をなでた。
「気持ち悪い、」
 そう言いながら、そっとキスをした。
 重ねるだけの、簡素なキス。
 でもわかってないな、長い付き合いなのに。
 そんな啄ばむようなキスされたら。
 もっと長いキスがしたくなる。
 もっと甘いキスがしたくなる。
 甘くて苦くて。
 あなたとだけの。
 あなたとだけしか出来ない。
 キスがしたくなる。
「愛してるよ」
 あたしに覆い被さった彼が、濡れそぼった声で言う。
 それだけで、もう、ぞくぞくきちゃうよ。
「うん、」
 のどの奥で返事。
 あたしもだよ。
 愛してる。
 いつもよりずっとずっと長めのキスは、やっぱり苦いマルボロの味がした。


(2003/09.18 394文字)



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