005/釣りをする人


「何をしてるの?」
「釣り。」
「そう。でも針の先が水につかってないよ。しかもその針まっすぐじゃない」
「………まあ、そんな小さなことは気にするもんじゃないんだよ」
「小さなことかなあ…」
「小さなことだよ。そんなケツの穴の小さいこといってるとあとから苦労するよ」
「小さくても関係ないと思うよ。全然苦労とかしないよ」
「わかってないなあ。男の趣味はさまざまなんだよ。女の趣味がさまざまなように」
「どういう意味?」
「セックスにおける古今東西」
「セクハラだー」
「セクシャルハラスメント。そうかな。割と本気なんですけど」
「げー、ホントに?」
「ホントに。」
「ふうん」
「昔中国に太公望と言う人がいました」
「知ってるよ。釣り人でしょ?」
「………。なんだ、知ってるの」
「常識だよん」
「その人もまっすぐな針で釣りをしたらしいよ。釣れないのにね、て誰かがいったら、これは精神修行です、て言ったらしいよ」
「ホント?」
「今作った」
「歴史の捏造は新聞の一面を飾っちゃうよ」
「そんなたいそうな人間じゃないし、新聞もそんなに暇じゃないと思うよ」
「…ねえ、」
「何でしょうお嬢様」
「精神修行になってる?」
「………。うん、まあ、それなりにね」
「そう。あ、糸引いてるよ」
「見え透いた嘘をつくのはやめなさい」
「……そこで少しは引っかかってくれないとつまんない。ぶー」
「別に、キミに面白いと思ってもらう必要はないよ?」
「人を楽しませるのも大事なアビリティのひとつだよ」
「能力といいなさい、能力と。妙にカタカナつかわないで」
「古いよ」
「そりゃどうも」
「ところでさあ、」
「何かな?」
「愉しい?」
「それなりにね」


(2003/10.08 677文字)



100text