010/トランキライザー
眩暈がする。
気持ち悪い。
手首にばかり意識がいく。
手首は傷だらけ。だけどもうすべては傷でしかない。
どうしてだろう。
どうして。
否、それは"どうして"ではなくて。
それは私自身の問題で。
横になる、以外の体勢だと眩暈がして目の前が白濁として見えない。
視覚が見ることを拒否しているよう。
世界のすべてを。
消し去ってしまいたい、願う。願ってばかり。
願うばかりでは、何も、変わりはしない。
頭の奥が痛い。目の奥が痛い。胃が熱い。ぐるぐる廻って、吐きそう。
目を開けると、差し込む光がオレンジになっていた。いつの間にか眠っていたらしい。
起き上がると、立ちくらみ程度の眩暈はしたけど、白濁はしなかった。
気持ち悪いのも、少しは収まったようだ。
ベッドから降りて、キッチンへ向かう。誰もいない。当たり前だ。一人暮らしなんだから。
戸棚の中に入っている紙袋を取り出す。
中にはゴムで止められた薬が10錠で1枚、かける5枚。計50錠。さらにかける3種類で合計150錠。
これだけの薬をいっぺんに飲んだらどうなるだろう。
考えると、自然と笑みが零れた。
精神安定剤や抗鬱剤の多量摂取は危ないと聞く。
150も飲めば、きっと眠るように死ねるんだろう。素敵だな。すてき。
考えながら、3種類1錠ずつキッチンのテーブルの上に出していく。飲んだら―――そう思いながらできない私は、だから生きているのだろう。
3錠だけ水で飲み下して、溜息。
たった3錠じゃ、死ねない。
たった3錠じゃ。
死ねない。
ずるずるとその場に座り込むと、目を閉じた。
フローリングがじとりと、肌に吸い付いた。
(2003/08.21 649文字)
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