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―――俺たちは、足したらふたりになるだけだ。
うつろな意識の外で、あいつが言った。
ほろほろ、意識が解けて融けてなくなっていく。
あぁ、融けていく。
あぁ、とろけてしまう。
なくなってとろとろどろどろ。融けて消えてなくなる。
「いいか、俺とお前はひとつになるんだ。足すんじゃない、かけるんだ」
耳元でささやく。温かい声。脳をゆるくさせる。
「お前は不完全な人間だ。お前には足りないものがある。俺にも足りないものがある」
頬を触れる掌の感触。
「お前に足りないものを、俺が補ってやる。俺の足りないところを、お前が補ってくれ」
ふわり、においが鼻をくすぐる。
「わかったら、指を握ってくれ」
唯一わかる感覚で、指を握った。
「ありがとう、」
事故があったという。その記憶はない。
目がさめたとき、それから2年が経っていた。
「……、」
鏡のなかの自分の顔は、あいつの顔だった。
掌にある傷は、幼いころ刃物で出来た傷だった。
顔はあいつのもの。掌――腕は僕のもの。
ふたりはひとつになった。
だけど、"1+1=2"じゃない。
僕たちは"1"ですらなかった。
だから、かけあわせた。
掛け合わせた僕たちは、"2"以上になれる。
「ね、」
出た声は、誰のものでもない。誰かの声。
(2004/03.24 507文字)
部分部分を掛け合わせて繋げてひとつの人間に。
補足を付けないと理解できない話の典型。
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