020/合わせ鏡


「どうしてひとをすきになるの?」
「そこにひとがいるからだよ」

「どうしてあなたは此処にいるの?」
「此処に君がいるからだよ」

「どうしてあなたは温かいの?」
「僕が生きているからだよ」

「どうしてあなたに触れられないの?」
「僕は君だからだよ」


「どうしてあなたは泣いているの?」
「君が泣かないから、代わりに泣いているんだよ」

「僕には、君の悲鳴が聞こえる。泣き叫んで、血を流して、なのに誰にも気付いてもらえない。でも、僕だけは知っている。僕だけは気付いている。僕はそばにいるよ。つらいときは鏡を覗いて。そうすれば、僕はいつでもずっとそばにいるから」


 触れた冷たい鏡の。感触と温度。
 鏡のなかの誰か。映っているのは私じゃない誰か。
 家族の寝静まった夜に、覗けばいつもあのひとがいる。
 頬を当てると、ひやり。


(2004/03.19 341文字)



鏡の向こうの誰か。
10歳くらいのとき、私はよく鏡のなかの第3者に話し掛けていました。
…ビョーキとかいうなよ。



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