024/ガムテープ


 雑貨屋で、ガムテープを衝動買いした。
 それを見て、彼女は不思議そうに言った。
「何に使うの?」
「何にって…使い道はいろいろだと思うよ」
「ふうん、」
 彼女は腑に落ちない様子だったけど、それ以上は詮索してこなかった。
 そんなわけで、僕の部屋にはガムテープがある。ワンルームの部屋の真ん中で、意味もなく―――いや、実際には何かしら意味があるはずだが今の僕にはわからない―――ガムテープと対峙する僕。
 何に使うんだろう。
 ふと考えると、思い浮かばない。
 燃えるごみは、昨日出した。だから、ごみ袋のふたをする、という用途は、1週間後まで使えない。
 服のごみを取る。……高校生のときならいざ知らず、今は完全に私服生活だ。ごみが目立つような黒い服は着ない。
 何に使うべきなんだろうか。
 悩んでいると、ふと、背後に気配を感じた。
 何の気なしに振り返ると、プロレスなんかで使うような覆面をつけた、体格からしておそらく男が立っていた。
 一時停止。

 てんてんてん…。

 彼は誰だろうか、そんなことばが頭に浮かんだ瞬間、僕は何か硬いもので思い切り頭を殴られ気絶した。


 気がついたら、部屋のなかに横たわっていた。
 なんてことはない、自分の部屋だ。
 だが違うのは、動けないということ。
 何故? と思って、首を下に向けると、足首をガムテープで縛られていた。
 ということは、後ろ手のまま動かない手もガムテープで縛ってあるのだろう。
 粘着性があるからか、まったく取れる気配はなかった。そういえば、口にも貼ってある。どうりで声が出ないわけだ。
 視界をめぐらせて、部屋の中を見ると、微妙に荒らされていた。
 もともと収納の少ない家なのだが、コンポの下に置いてあった小さいもの入れの引出しが床に落ちていた。なかには、確か緊急用にと、10万円ほど入れていたのだが。
 まあ、ないんだろうな。
 これはアレだろうか。空き巣というやつだろうか。いやいや、空いてないよ。僕は部屋にいた。そうか、じゃあ、強盗か。なるほどなるほどなーるほど。
 ………いやいやいやいやいやいやいやいやいや。
 これは結構緊急なのでは?
 と思ったが、声も出ないし身動きも出来ないのでどうにも出来ない。どうにもこうにもブルドッグ。いやいや、僕はそんな世代じゃない。
 あ。
 そこで、頭にひらめいた。
 ガムテープの使い方。
 長さは充分にあるし、粘着性が高いから、ちょっとやちょっとじゃはずれないし、布なら更に強度がパワーアップ。
 人を縛るのにはもってこいだ。
 そうか。こういう使い方があるんだな。

 ……………。

 ところで僕は、これからどうすれば良いんでしょうか?


(2003/10.11 1050文字)



100text