027/電光掲示板


『7時にテレビ塔の電光掲示板の前で待ってて』
 そんなメールが突然きた。3年付き合ってる彼氏から。
 雪が降る、一年でいちばん寒い時期。マフラーを口元まで上げて、ぎゅっと目を閉じる。
「さーむーいーっ」
 誰にも聞こえないような声で言う。
 平日の夜。7時少し前。会社帰りのおじさんや、学生がひっきりなしに目の前を通る。
 携帯を見ると、「06:59」。彼が来る気配はない。遅刻、かな。
 ぼんやりと、電光掲示板を見上げる。空気が乾いているせいだろうか、いつもよりくっきり見えるような気がする。たぶん錯覚だけど。
 7時。
 ああ、こりゃ遅刻だな。ため息をついた、そのとき。
『サエコ、』
 私の、名前。
『結婚しよう ユキヒロ』
 ざわざわ、通行人が立ち止まる。サエコ。ユキヒロ。ああ、これってもしかしてもしかしなくっても…。
「サエコ」
 振り返ると、ユキヒロがたっていた。
「こ、これ…」ふるふる、電光掲示板を指差す。
 ずんずん、大股で近づくと、ユキヒロはぐい、と片手で箱をさしだした。
「……」
 黙っていると、両手にもちかえた。お願いします、のポーズ。何を? 何をって、やっぱり、もちろん……結婚?
 おずおず、箱を受け取ると。周りから拍手があふれた。…恥ずかしい。


「というようなことがあったのよ。いわゆるプロポーズってやつ。まさかあんなカタチでくるとは思わなかったけど」
「へぇー、お父さん意外とやるねっ」
「でもね、コレお互いに相当恥ずかしいから。ユキはそんなこと考えないまともな彼氏を選びなさいね」
「はーい」 「……サエコさん、そういう言い方はちょっと…」
「事実だもん。ねー」
「ねー」
「………うん、まあ、ね」


(2004/03.19 670文字)



電光掲示板でプロポーズ。
うぅむ、野次馬してみたい…そういう状況。



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