069/片足


 僕の足は片方しかありません。
 右足だけしかありません。
 義足をつけたらどうかって、お医者さまは言うけど、うちにはお金がありません。
 だから、僕は杖をついています。
 杖をついて歩けるので、義足はなくても平気です。
 それに、足がないのは僕だけではありません。
 隣の家の女の子は、左の足首と、片目がありません。
 僕の弟は、片腕がありません。
 みんな、みんな。
 どこかがありません。足りません。


 僕の足は片方しかありません。
 お父さんの言いつけを破って、外で遊んでいたからです。
 無用心だと、お父さんは僕に言いました。
 あの子はこれからどうやって生きていくんだ。
 お父さんとお母さんが言っていました。僕が聞いているとは知らないで。
 まともな仕事なんか、出来ないだろう。どうやって生きていくんだ、あの子は。

 僕は、どうやって生きていけばいいのでしょうか。

 僕の足は片方しかありません。
 それは、我侭な大人のせいだとみんなが言っています。
 自分たちの都合ばかり考える大人たちが、勝手に戦争をするからだといいます。

 僕の足は片方しかありません。
 もう片方の足は、地雷で粉々になってしまいました。
 後から踏んだところに行ったら、地面が黒ずんでいるだけで、僕の足は何処にもありませんでした。
 何処にもありませんでした。
 僕の足は何処に行ってしまったのでしょうか。

 かみさま、いるのなら、教えてください。
 僕の足は、何処に行ったのですか?


 僕の足は片方しかありません。


(2003/10.31 597文字)



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