077/欠けた左手


 ミロのヴィーナスの左手は、何処に行ったのだろうか。

 見るたびに、いつも、思う。
 この美しい彫像の、左手は、何処に、行ったのだろうか。

 こたえは見つからない。

 埋もれた土の中から見つかったそのときから、既に左手はなかったという。
 一体どんな左手をしていたのだろうか。
 どんな。美しい手を、していたのだろうか。
 想像もつかない。
 想像もつかないほどに、美しいに違いない。

 そこにないのが当たり前の、ミロのヴィーナスの左手。欠けてしまった左手。
 それは今、何処にあるのだろうか。


(2003/10.31 226文字)



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