079/INSOMNIA
眠れない。
夜は長い。眠れないと明日に響くなんてことも、最近はなくなった。
眠れないし、眠くならない。
ベッドに横になるけれど、まぶたを閉じても、眠りの重さは一向にやってこないまま、朝になる。
深夜、家族はみんな寝静まって、僕はひとりで呼吸を繰り返す。
眠れないことは苦痛じゃない。ただ、ひとりで過ごす時間は、長すぎてもいいことなんてひとつもない。
考え続けていくと、精神はあっという間に磨耗していく。
僕はどうして眠れないんだろう。どうして眠くならないんだろう。
授業中に居眠りする、挨拶すら交わしたことのないクラスメイトを羨ましく思う。
どうして眠れないんだろう。いつから眠れなくなったんだろう。どうして眠らなくても平気なんだろう。
どうしてみんなはあんなに眠れるんだろう。
闇に慣れた目に映る天井が落ちてきそうな気がする。布団のなかで、足先が痛いくらい冷たい。
眠りたい。眠れない。眠りたいのに。
外で犬が吠えている。お前も眠れないのか。それとも何か不満なのか。
僕はすべてが不安だよ。
眠れない毎日。思考はとどまることなく僕を巻き込んで肥大して。
眠りたいと願うのに、願えば願うほど、眠りは遠のいていく。
暖房をつけているのに、吐く息が白い。どういうことだ。
皮膚の表面をぞわぞわ寒気が走っていく。走って、でも、抜けない。走って止まって、また走る。その繰り返し。
心臓を細い糸が何重にも緩やかに縛り上げていく。
真綿なんて生易しいものじゃない。こっちはピアノ線並みの鋭さ。なのに心臓は傷ひとつつかないで、ただ苦しいほどに締め上げられていくだけ。
早く朝になればいい。
そうすれば、僕はまた笑うから。
みんなの前では、僕は僕を演じていられる。誰も見ていない深夜に、僕は何になればいいのだろう?
世界中が闇に落ちていく。そして僕という存在は真っ黒に染まって。日の光に明らかになることを恐れるのに、朝日を望む。
寝返りを打つ。
閉じたまぶたの裏に、やっぱり眠りはかけらもない。
(2005/12.13 813文字)
私は眠れるときと眠れないときの差が激しいです。ていうか、思考のループにはまるともう眠れない。
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