花葬
pre-monologue
普段飄々とした弟は、ときどき誰もが想像しないような行動にでることがあった。
だから、3年前に突然いなくなったときも、誰も気にも留めなかった。そのうちひょっこり帰ってくるだろう、その程度で。
捜索願こそ出したものの、警察も特に動くことはなく。弟は帰ってこないまま、3年が経過した。
無感動で、不感症なふりをして、人一倍傷つきやすくて。
内面は繊細な硝子細工のようなのに、ポーカーフェイスで、誰にもそのことを悟らせない。
妙に大人ぶって、だけどときたま覗かせる、年相応の笑顔は。僕には出来ないくらいにまっさらで。裏も悪意もない。
その弟は。
その弟が。
「ちかげ、」
河川敷の奥の雑木林のなか。花を植えた。
絶えず何かしらの花が咲いているように。当たり障りのないメジャーな花から、弟がすきだった少しだけマイナーな花まで。
植えた。
赤、ピンク、オレンジ、黄色。
そのすべてが美しく花開き。
そしてすべてが、何処か赤をはらんだ色彩で。
寄りかかった樹木の湿り気が、首の後ろからするりと入ってくる。
だらりと垂らした腕、掌の中に。僕はすべてのこたえを持っているのに。どうしようもない事実を抱えているのに。
それをどう処理すればいいのか。
どうやったらすべてを変えないままに人に伝えることが出来るのか。
僕は知らない。
眺めた掌は、赤と茶色に汚れている。
擦っても洗ってもとれることのない色に。
汚れている。