ピアノの周辺―はじめてのレッスン1-10    

ピアノの周辺

【はじめてのレッスン】
1〜10回(99/05/10-99/07/12)

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5月10日--愛の喜び

レッスン開始、1回目。自宅から歩いて15分。この近さ、こうでなくっちゃね。 習いに 行く前の緊張感も、15分ほど歩く事でリラックスした気分になれるし、帰りは、 教えてもらった事を、のんびり歩きながらあれこれ反芻できる。準備運動と整 理体操みたいなものだ。この年(1955年2月生れ)で始めて、どこまで弾けるよ うになれるかな。

とりあえず、自分なりに弾けるようになった曲を先生に聞いてもらった。シニア・ ピアノ・レパートリーAの中にある 「愛の喜び」 。これ、オタマジャクシが大きく て見易い。マルティーニという人が作曲したもの。イタリアの人で(1706-1784)、 グルックやモーツァルトの教師として有名なのだそうだ。ポケット音楽辞典にそ う書いてある。この曲は好きなタイプ。だから、思いっきり感情を込めて弾いて みた。でも、実のところ人前で弾くのは、初めて。ものすごい汗をかいた。先生 曰く「うーん、大人の弾き方ですね。」 ムムッ、まぁ、あまり深く考えないことに しよう。と、かくして物語りは始まったのでした。

5月17日--ハノン

レッスン2回目。タオル地の大判のハンカチを持って出かける。この間、全 身から汗が噴き出ちゃったもんね。だから。

私:あのー、指を強くするには、どんなことすればいいんですか?やっぱり、 お風呂とかで指を揉むとかしたほうがいいんですか?

先生:オ・フ・ロ(スタッカートで。それもかなり高音)

しばらく間をおいてから、ハノンの教本について説明をされた。うーん、なる ほど。いまでは、曲を練習する前に必ず、20分くらいかけて弾く習慣がつい た。ところが、このハノン、私にとっては曲者。律義にメトロノームを60に合 わせて弾き始めると2分も経たないうちに、猛烈な睡魔に襲われることにな る。ある日そのまま眠りについたら気持ち良かった。


5月24日、5月31日--レッスン3,4

時間に追われて行く事はいったけど記入なし。


6月5日--シュールやね

東京はお茶の水のカザルスホールで、ピアノ演奏を聴く。曲目の中にスクリャ ービンの二つの左手のための小品OP.9というのが有って、左手だけを使って ピアノを演奏するところを始めてみた。水色のドレスから伸びる白い腕がライ トの光りをあびて、なおいっそう光沢をおび、腕、手の甲、その先の独立した 動きをする五本の指がいくすじもの曲線を描きながら鍵盤の左右、上下を舞 っている。一番前の席に座ったからよく見えた。頭の中でシュールやねなんて 思ってしまった。聴いた中では、シューマンの幻想曲、ハ長調Op.17がいいな と感じた。私の場合、良い演奏をきくと胸がジーンとする。このことは曲調には 関係ないみたい。めちゃくちゃ明るい曲でも同じだから。

ところで、このホールはトイレの数が多い。ざっと数えただけでも16あったよう な気がする。それに比べると、新宿の某書店の劇場はひどい。おもしろい芝居 をやるのにね。


6月5日--ブラボー

北京で京劇を観たとき、客席から 「好!」 (hao3声、aのところをちょっとさげ て発声する)と、声がかかった。ああ、いいなと思った。日本の音楽会って、 演奏者が日本人であってもブラボーなのね。なんか表現に無理があるというか、 どうもピンとこない。無理して言わなくても、良かったと思って嬉しくなったら、 精一杯拍手すればいいんじゃないのかな。


6月7日--ずうずうしいでしょうか?

レッスン5回目。7月の発表会に向けて練習をはじめている。訳の分からない うちに発表会というものが出てきた。まだ、発表するなんてとモジモジしていた ら、まだ2ヶ月あるから大丈夫ですと言われ、出席することにした。先生がこう いうのはどうかしらと見せてくれた曲が、なんだかとても難しく思えたので、自 分で選んで逆にこういうのはどうでしょうか?と聞いてみた。先生、少しだけノ ケぞっちゃったふうだったけど、好きな曲をするのが一番良いのです。といって 下さった。しかし、練習を始めてみたら、ああ、私には難しい。でも、楽しい。 難しくて楽しくて、この所そんなことの繰り返し。


6月14日--レッスン6回

この日も多忙につき記入なし


6月21日--肩の力をぬいて

レッスン7回目。発表会まで、もう一月をきった。選んだ曲はモーツァルトの メヌエット、KV320b=334。ディヴェルティメント、日本語でいうと嬉遊曲なん て言うらしい。こんな事、全然知らない。けれど、この曲は好き。しかし、譜 を追いかけるのがやっと、どうも力まかせに弾いてしまう。肩がバリバリ。 先週はずっと寝不足が続いたので、集中力も切れていた。今週は体調は頗 るいいのだが、思うように満足に弾けない。スタッカートの部分は手首を柔ら かくして、指を振り下ろす。ボールが地面を弾けていくように。ウーム、そうか 私のは一つ一つ肩から振り下ろしていたようだ。くたびれる訳だ。

先週はおもしろい経験をした。鍵盤が歪んで見えた。まるで波うっているよう だった。このピアノおかしいんじゃないかと本気で思った。歪んだ白鍵と黒鍵 を見て弾いていたらムカムカ吐き気まで催した。


6月23日--Midnight,music

渋谷のアップリンクという所で「グレン・グールドをめぐる32章」を見た。期待 していたほどではなかったが、ノーマン・マクラレン(1914−1987)の“球体” というアニメーションにおもしろさを感じた。球体の一つが二つになってその 二つが四つになってと倍倍で増えていって、また減っていくというもの。 しかし、大部分の人がぐっすり眠っていたね。眠れていいな。この4ヶ月ほど 私は来る日も来る日も、寝る前に床の中でグレン・グールドを聴いている。 なんだか寝付きがいいような気がする。


6月28日--見落としがこんなに

レッスン8回目。この一週間は指がよく動くようになって、なんとなくそれらし くなってきた。しかし先生に注意されて始めて(情けないなー)気づくのだが 音符の読みがあまい。短い曲なので強いて暗譜をしなくても覚えたつもりに なっていたのがまずかった。四分音符と八分音符が混在しているなんて、言 われてみれば確かに八分休符がついている。イヤダ、今日始めて分かった。 恥ずかしいことだけど、こういう基礎が私には無い。今週は指先に神経を集 中するように努めて練習してみた。 前半部分をゆったりした気持ちで弾いていると、楽しんで弾いているのがよく わかりますよと言われた。わかりますかー、やっぱり。そうです、まだメチャ メチャだけど嬉しいんです。


7月2日--私は苦手

“君が代”が今、なにかと問題になっているけどメロディーと一緒に歌詞が すぐに出てきてしまうせいもあって、私はどうも苦手。音楽としても何処に 良さを見つけたらいいのかわからない。歌えと強制されたらやっぱり嫌だな。


7月5日--左の指

レッスン9回目。左手だけを使って練習をする。1と3、それに2と4の指が 交互に動いてくれない。1と3でシとソ、2と4でラとファ#、そして又1と3に もどる。これが出来ない。指摘されるまでは、全部1と2でカバーしていた。 まるで酔っ払った蟹の横歩き。しかしここはレガートで弾かなければならな< いところだから、指が動かないと音にならない。それなのに私の指といった ら悠然たるものだ。我が道をいっている。まぁ、しかたないか、指にしても言 い分はあるだろう。けれど、左手の部分だけ、練習していると、自分が何の 曲を練習しているのか分からなくなる。妙に新鮮?な気分。


7月12日--始めてのグランド・ピアノ

レッスン10回目。発表会前ということで、始めてグランド・ピアノを弾かせて もらう。うわぁー、なんてタッチがいいのかしら。指にすっと馴染む。音も綺 麗。しかし問題はこちら。まだボロボロ。ああ弾けない。右手はスタッカート で、左手はレガートで、そうまだ無理。最後の助言は“一つや二つ音を外し たってどってことないの。それは間違いに入らないのです”へぇー、そうなん だ。でも、出来ればせめて間違えずに弾き通したい。