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caplice

「嗚呼、今年も気が付けば紅葉シーズンになっていたんだな」
「だからって、何で急に俺を呼び出すんだよ」
「そりゃ、会いたかったからに決まってるだろ。それとも、お前は俺に会いたくなかったとでも言うつもりじゃないだろうね」
「べ、別にそんなこと言ってねぇだろうがっ」


 急に呼び出されて、日も暮れて夜の暗闇の中で何をするのかと思えば、紅葉見物。
 ライトアップされて綺麗だな、と暢気に宣っているのは何を隠そう自分の兄貴だったりする。
 日頃、頻繁に会うことのない擦れ違い生活(?)のためか、事ある無しに関わらず手前勝手な理由を付けては呼び出すし、それに悪態を付きながらも付き合ってしまう自分が居る。
 本当に嫌なら行かないのだろうが、人に寄りかかりたいな、と寂寥感のようなものを感じ始めている頃に、当人が自覚する前に呼び出しが掛かる。
 何だか俺様専用のセンサーでも働いてるんじゃないだろうか、と一時気味悪く思いもしたが、今は素直に有り難かったりもしている。
 今日も今日とて、理由もなく急に呼び出された。


「偶には直接会って、親交を深めておかないとな。薄情な誰かさんは、こんなに大事に思ってくれている相手のことも平気で裏切ろうとする。命あっての物種だ、といつも言っているだろうに」
「別に裏切ってねぇし。それに、死にたがりだって言われてもピンと来ねえし」
「だから、怖いんだろうが。自覚があれば踏み止まれる。自覚もないままに後先考えずに突っ込んでいくからな、お前は。見ている此方は、いつもハラハラし通しだよ」
「勝手にハラハラしてりゃいい。俺は頼んでねぇし、死にたいと思ってる訳でもねぇし」
「口では何とでも言えるよ。こうして元気に憎まれ口叩いている内は大丈夫だ、と思えるから様子伺いも兼ねて呼び出してみたが、大丈夫そうで安心したよ」
「あぁそうかよ。なら、もう帰るからな」


 踵を返した弟を背後から羽交い締めに抱き締め、その温もりを生きている証の鼓動を確かめて、襟元の見えるか見えないかの辺りに紅葉に負けないくらい赤い証を刻んでから解放した。そのまま何処か誰も知らない場所に監禁して、自分だけの存在に変えてしまいたい衝動を抑えながら。
 我ながら何処か狂ってしまっているのは自覚しているが、すでにこの狂気は抑えられないくらいに大きなものに成長してしまっている。
 やがて、切り離される時が来ても何処かで繋がっていたい思いを隠しきれず、僅かな時を惜しんで様子を窺い続けているが、本当にいつか攫っていってしまうかも知れない。
 家族という名の檻から自ら外れた自分が、道連れのようにこの大事な存在を連れ去ってしまう時が来るかも知れない。
 その時は、どうか誰も悲しまないで欲しいと勝手なことを思いながら考えている、いつもその時が到来する瞬間のことを。


「あんまり攣れない態度ばかりだと、本当に攫っていって誰にも見つけられない空間に閉じ込めてしまうよ。それが嫌なら、偶には機嫌良く付き合って欲しいね」
「俺が何を言ったってどうせ聞くつもり無い癖に。別に今まで通り、自分の思うようにすればいいじゃねぇか。急に変わったら気持ち悪いだけだろ」
「それもそうか」


 高らかに笑いながら、今日はこれくらいで帰るか、と兄は姿を眩ました。
 残された俺は、いつものように翻弄された後しばらくは何も考えられないし、何も出来ない状態になる。今日もそれは同じだった。
 ただ、紅葉の赤に負けないくらい赤い証が、何か自分が此処に居続けることを許された証のような気がして、もう少しだけ一人ぼんやり赤や黄色の色とりどりの自然の恵みに浸っていた。



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墨村兄弟のお話だったりします(苦笑)
所謂、二次創作ですね。
いつまで置いておくか解りませんが、季節外れになってきたら置き場所変えます。
隠れ家に移します・・・年内に隠れ家も梃子入れしたいなぁ。

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