水上コテージ
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| 左:バルコニーから見た隣のコテージ/右:バルコニーにて | |
ランカウイで私たちが泊まった「ベルジャヤ・ランカウイ・ビーチ&スパリゾート」は、
ランカウイ島の南西部にあって空港からも近く、ベルア岬を取り込んで海も山もあるリゾートホテルでした。
メインはなんといっても島内唯一の水上コテージです。
このホテルは各国のVIPもお忍びで利用したりするらしく、海岸線に沿って20数棟ある水上コテージの中心には
「プレジデントスイート」という名の、1棟だけ2階建てでベッドルームが5つもあるというコテージがあって、
そこにはイギリスのエリザベス女王が泊まったということでした。
意外にも一泊500RM(1RM:約35円)だそうなので、泊まろうと思えば泊まれてしまう料金です。
もっともこれは昔このホテルで働いていたというタクシーの運ちゃんが教えてくれた数字なので、
ひょっとしたら間違っているかもしれませんが・・・。
◆ ◆ ◆ ◆
私たちがホテルに着くとウェルカムドリンクが待っていて、オレンジ色のトロピカルジュースをサービスしてもらえました。
その時には夜の7時を回っていて、おなかが空いて喉も渇いていたので、
何はともあれジュースを一気に飲み干しました。
とってもおいしかったのですが、それだけで私のおなかが満足するわけはなく、
部屋に行く前にホテルのレストランでブフェを取ることにしました。
レストランでは日替わりでブフェディナーがあって、その日は「バーベキュー」がテーマでした。
リアルな子羊の丸焼きは初めて食べましたが、固めのお肉にレモンを絞って食べたらこれまた最高においしく、
何度もお皿を持って通うのが面倒になり、終いには丸焼きを囲むように立っている男の人に混じって、一緒に立って食べていました。
レストランにいた宿泊客は西洋人と中国系の家族連れがほとんどで、その夜は日本人は見かけませんでした。
お肉は羊のほかにチキンもあったし、ほかにも何種類もの辛いカレーにチャパティ、ナン、チャーハンやパスタやパン、
サラダ、フルーツにケーキなど、多民族・多宗教の国マレーシアらしく、どんな人にも対応できるだけの料理が揃っていました。
幸いなことに宗教的にも民族的にも食欲的にも食べ物になんの制限もない私たちは、
「おいしいね」とか「あっ、あれできたてだよ!」以外にほとんど会話をすることも無く、
「これでもか」と胃の限界に挑戦するかのようにひたすら食べ続けました。
ディナーブフェは別料金で、一人45RMくらいだったと思います。
食事のあと、本館の中を少しうろうろてから預けていたトランクをもらいにいくと、
そこには私たちのトランクだけがポツンと残っていて、係の人には「忘れちゃってるのかと思ったよ」と笑われました。
確かにゴハンを食べている間は荷物のことは忘れていました。
ホテルの人はみんな「バティック」といわれるろうけつ染のアロハみたいなシャツを着ていました。
◆ ◆ ◆ ◆
私たちの水上コテージ「1122号室」は本館からバスで5分くらいのところにあり、
1列に並んだコテージの端から4つめくらいでした。
バスは少し手前で止まり、運転手と一緒に乗ってきた同い年くらいの男の子が私たちのトランクとキーを持って先導してくれました。
11月のランカウイは日没が7時ということで、あたりはもう真っ暗でした。
曇っていて星はあまり見えませんでしたが、歩いている桟橋の真下はもちろん海で、心地よい波の音がしていました。
ドアを開けてもらって中に入ると、すぐ右手にクローゼットとベンチチェスト、左手にバスルームがあって、
正面に20畳ほどのフローリングのベッドルームがありました。
ベッドルームの向こうにはバルコニーがあって、その向こうには島影さえもなく、ただ海だけが広がっていました。
男の子はベンチチェストに荷物を置くと、バルコニーに通じるガラス戸を差しながらたどたどしい日本語で、
「開けちゃダメ。虫たくさん。」と照れくさそうに笑いながら教えてくれました。
それだけ言うとニコニコしてドアのところに立ったまま動きません。
どうしたんだろう・・・、と不思議に思ってすぐ気がつきました。
チップをあげなくちゃ!
二人分で2RM渡すと、「オヤスミ」と言って帰って行きました。
◆ ◆ ◆ ◆
ベッドルームにはキングサイズのダブルベッドのほかに、ドレッサー、テレビ、冷蔵庫、デスク、テーブルとソファがあって、
天井ではファンが回っていました。小さな窓が両側についていて、もちろんエアコンもついています。
鏡台の引き出しを開けると、「QIBLAT」と書かれた青色の矢印のプレートが貼ってありました。
これはきっとイスラム教徒のお祈り用に、メッカの方角を差したものだと思います。
外国に来てこういう文化の違いに出会うとワクワクしますね。思わずお祈りしてみようかな、なんて。
テーブルの上にはウェルカムフルーツを用意してくれていて、
スターフルーツやパパイヤなど南国の果物にはココロひかれましたが、さすがにおなかがいっぱいだったし、
さっそく虫がとまっていたので遠慮することにしました。
さっきは外に出ない方がいいと言われたものの、やっぱり出てみたくなって「虫より海よねっ」とバルコニーに出ると、
茶色のテーブルと椅子が置いてありました。すぐ下が海といっても、テラスからすぐ泳げるというわけではなくて、
海面までは5mくらいあったし、真下には大きい石がゴロゴロしていました。
これでもしお天気が良くて満点の星空だったりしたらムード満点。
波の音を聞きながらさぞかし新婚カップル向けの夜となることでしょう。
◆ ◆ ◆ ◆
私たちは女二人でテラスの手すりにもたれて肌に生温かい潮風がまとわりつくままにさせながら、
見えない星を見上げてむつまじく語り合ったあと、順番にシャワーを浴びて寝ることにしました。
バスルームには横長の大きな一面鏡のついた大理石の洗面台があって、横のタイルにはドライヤーがついていました。
アメニティグッズも石けん、カミソリ、シャンプー&リンス、シャワーキャップなど、清潔で充実していました。
洗面台の向かいがバスタブで、十分足を伸ばせる大きさでしたが、
お湯をためると使い終わった後になかなか排水しないのでもっぱらシャワーで済ませていました。
バスタブにもシャワーはついていますが、シャワーカーテンがついていないのでシャワーはシャワールームを使いました。
バスタブの隣にトイレがあって、トイレの向かいがシャワールームです。
ルームといっても一応ドアはついていますが、下が開いていて段差があまり無いし、
シャワーも上の方にに固定されていて角度が変わるだけのものなので、トイレの方を水浸しにしてしまうこともしばしばでした。
しかも温度調節が難しく「ちょうどいい」にするだけで疲れてしまうほどでした。
こういう場合は真夏に行って水浴びするのが正解かも知れません。
さて、イスラム圏の国といえば気になるのがトイレ。
紙を使わず水で洗うというアレです。最初はどうなることかと思いましたが、
さすがホテルのトイレには紙も備え付けられていました。INAXのトイレでした。
右側には先の細くなった例のホースがついていて、手動のビデもありました。
ここはいっちょ「ウォシュレット」だと思って挑戦してみようかと思いましたが、
やっぱり長年紙の習慣に親しんでいる私にはあと一歩の決心がつきませんでした。
◆ ◆ ◆ ◆
ベッドルームに戻ると先に戻っていた友人はまたバルコニーに出ていました。よほどお気に入りの様子です。
私に気がつくとベッドに戻って来て、二人で大の字になってもまだ大丈夫なベッドの上でまた話に花が咲きました。
二人ともすっかりこのコテージが気に入って、「帰りたくないねえ」「暮らしたいよね」「また来ようね」と繰り返していました。
会話が途切れるとほかには波の音以外なんの音も声もなく、黙ってベッドに耳を当てているとると、
コテージの柱や岩に波が当たって跳ね返る「ちゃぷん」という音まではっきりと聞こえてきます。
まるで船の上にいて、自分たちも揺られているような気分でした。
その日はそんな波音を聞いているうちに、どちらからともなくすっかり眠り込んでいました。
◆ ◆ ◆ ◆
目が覚めたのはガラス戸がガタガタと揺れる激しい音のせいでした。
夜は明けて朝の9時になっていました。友達は寝ていましたが外の方を見るとカーテンが風で揺れています。
鍵は閉めているのですきま風というやつです。「風が強いな・・・」と思ってまた寝ようとすると、
今度は昨夜の「ちゃぷん」と同じ海とは思えないほどの「ザッザーン」という波の音が耳に入りました。
これは一体何事!?と起き上がってカーテンを開けてびっくりしました。海が荒れ狂っていました。
昨夜、くもり空を見上げながら「明日は晴れるといいね」なんて言っていましたが、
夢にまでみた青い空、エメラルドグリーンの海どころではありません。
お天気は回復するどころかドロ沼に向かっていたようです。
鉛色の空からは風に乗って雨が縦横無尽に突き刺さるように降っており、海も茶色く濁ってあちこちでしぶきがあがっています。
ベッドに座っていると真下の床に波が当たっているのが感じられ、揺れているような気さえしてきます。
もしこのまま柱が流されてしまったらどうしようと本気で心配になりました。
ドアの方へ行ってみると、なんと50cmほど浸水しているではありませんか!
もっともこれは海水ではなくて、新聞を入れるためにドアの下が開いているので雨が吹き込んでいたせいでしたが。
私がバタバタと歩き回っているので友人も目を覚まし、この事態を説明するとあまりの出来事に「フッ」と鼻で笑いました。
昨日は豪華な船旅を楽しんでいるかのようだったのが、一気に嵐に見回れた漁船のような気分になりました。
水上コテージというのは、やっぱり青い空、エメラルドグリーンの海、満点の星空、凪いだ海だからこそいいのであって、
こんな日のためにあってはいけません。こんな日はコテージ住まいはしたくありません。
あとでホテルの人に聞いたところによると、乾季の11月にあれほどの天気になることはここ数年無かったことで、
あのスゴイ風は「ラディナン」という台風みたいなものだと教えられました。
まあ、別の人に聞いたら「あんなのはラディナンじゃないよ」とも言われたので、結局どっちなのかよくわからないのですが・・・。
そんなわけで、私たちは千載一遇のチャンスに恵まれたらしく、
ランカウイ滞在3泊のうちの2泊、水上コテージでは嵐に投げ出された漁船状態でした。
もしこのページを読んでくれた方がランカウイに行かれることがあったら、雨季の乾季の変わり目というあやうい11月ではなく、
多少高くても思いきり乾季のシーズンに行かれることを強く強くオススメします。