7月25日(水)


日は土用の丑の日です。毎年この時期になると思い出すのは学生時代のバイト。ウナギが名物の和食レストランだったのですが、私の仕事はテイクアウトのウナギ弁当とお寿司の販売だったので、いつもは夕方出勤なのに、この日は朝からパートのおばちゃん達に交じって声を張り上げていました。その代わり、賄いにもウナギが出されて、運が良ければ帰りには売れ残りのウナギ寿司もこっそり頂けて、まさにウナギ三昧の一日でした。

日は日本のどこやらで最高気温40℃以上が観測され、京都でも野球部員10人が練習中に熱中症で倒れるという恐ろしく暑い一日でした。新聞をめくりながら、目は自然と涼しげなものを選っていたらしく、「真夏の風物詩」と銘打たれた下鴨神社の「みたらし祭」というのを見つけました。

鴨神社では葵祭に次いで有名なお祭りですが、境内にある池に足をつけて無病息災を祈るというこのお祭りには、まだ一度も行ったことはありませんでした。見ると、土用の丑の今日が当日祭で、朝の5時半から夜11時までやっているというので、会社帰りに行ってきました。

道は「糾(ただす)ノ森」の中にあって、いつもはカップルかウォーキング中の中高年しかいないような暗い砂利道なのに、今日は食べ物やゲームやらの露店がズラリと並んでいて、浴衣を着た家族連れや子供たちで大賑わいでした。露店が出ているなんて思わなかったし、私みたいな物好きか、おじいさんおばあさんくらいしかいないだろうと思っていたのでびっくりしました。25日は天神さんの日でもあるのですが、見るといつもは天神さんの境内で串カツを売っているおじさんがいました。今夜はこっちの方が遅くまで開いているので儲かると踏んだのでしょうか。

をくぐるとロープが張られていて、「お参り」と「お帰り」のコースに分かれていました。池の場所を覚えていなかったので、この先にあるのかと言われるままにお参りのコースを進んでいくと、突き当たりにはご本殿があり、お賽銭箱が折り返し地点になっていました。ナルホド、神社の方でも今日は書き入れ時らしく、道理で夜11時まで気張っているはずです。折り返し地点を過ぎると急に行列が始まり、ロープに沿ってうねうねと進んでいく様子はUSJを思い起こさせました。

内はたくさんの提灯が灯ってとても明るかったのですが、ふと夜空を見上げるとおぼろかかった三日月が浮かんでいて、世界文化遺産になるような古めかしい神社の屋根と、空に届きそうな森の木々とが同じ視界に入って、却って明かりを消してほしいくらいの風情でした。

列もいよいよ最後の「うね」になると、係の人がビニール袋を配り始め、それをもらってスノコの上で靴を脱ぎます。みたらし祭初参加の私でも、池に足を付けるというからには、ひざ丈のスカートに素足でサンダルを履いて、タオルを持参するくらいの用意はしていました。マットの上を素足で進んでいくと、「入り口」にはテントが張られていて、そこには「お池 100円」と書いてありました。

んと、お池に入るには100円いるのか!!一瞬どこに来たのか忘れそうになりましたが、係の人が叫ぶには、それはローソク代とのこと。別に払わなくてもよかったのかもしれませんが、前の人から順番にまるで入場料のように100円を払ってはローソクをもらって入っていくので、もう来ないかもしれないし、私も100円払って中に入りました。

ると、確かいつもはロープが張ってある御手洗(みたらし)川に下りられるようになっていて、小さな赤い太鼓橋の下をくぐって御手洗池に出るようになっていました。あちこちから「冷たぁ!」という歓声が聞こえてくるなか、ワクワクしながら足を水に浸すと、果たして日中の暑さがウソのような冷たさです。しかも橋の下は洞窟みたいに真っ暗で、探検でもしにきたような気分。その先ではローソクの火がポツポツと増えていき、とてもとてもきれいでした。

ろんな事件の影響か、幅狭な川のあちこちに警備のおまわりさんが立っていてジャマなくらいでしたが、子供たちを見つけると、「おぼれんように気ぃつけや」「これからもっと深かなるで」と声をかけていて温かいかんじです。前にいたおばあさんが「スソ濡れまっせ」と言われていたので、私もひざ丈のスカートをさらにたくし上げると、目ざとく見ていたおまわりさんに「おネエちゃんは大丈夫やで」とつっこまれました。池まで行くと、水はひざ下まで来て、とてもいい気持ちでした。

の周りにはロウソクを立てるところがあって、細長い竹串にささっているロウソクを手で抜いて、そこに立てるのですが、普段ロウソクを持ち慣れない私は、ロウが手に垂れてきたらどうしようとヒヤヒヤするわ、近づくとほかのロウソクの火が熱くて熱くて早く立てなければと焦るわ、とにかく必死でした。そこへいくと隣のおばあさんは慣れたもので、熱がるでもなくゆっくりとロウソクを立てて、しかも煙りもないのにその火の辺の空気を手のひらでかき寄せて頭にこすり付けていました。

から上がって足を拭くと、今度は「ご神水」が待っていました。それはどこからやってきた水なのか、流しそうめんの台のようなものを通って前の方からどんどん流れてきていました。それを1列に並んだ係の人が柄杓ですくって、陶器のお椀に入れて次々と出し、それを反対側に並んでどんどん頂いていくというシステムのようです。これには「お心ざし」と書かれていて、前の人たちをみると10円の人がほとんどだったので、もう来ないかもしれないし、さっきお賽銭を投げなかった分、ここで10円献上することにしました。ご神水はよく冷えていておいしかったです。

こまでがコースのようで、並び始めてから25分が経過していました。入り口のテントを見ると、混んできたらしく入場制限されていました。帰り道の露店もまだまだ賑わっていましたが、「んなもん買わへんで!」と子供を引きずって歩く頼もしいお父さんの後をついていったおかげで、割とすんなり通り抜けることができました。見てみると周りはほとんどが子供なのに、露店ではグズっていても、あんな絶好の水遊び場で、ふざけて水を掛け合ったり走り回ったりする子は1人も見かけませんでした。

後に、みたらし祭というからには「みたらし団子発祥の地」としているお店がやっぱりあるのですが、ここは門前の一番良さげな場所に陣取っていて、やっぱり行列していました。もう来ないかもしれないし、3本くらい買って帰ろうかとのぞいて見ると、あっさり「10本1000円」でした。1本100円もするみたらし団子を口にするには、親を連れてこなければなりません。今度は親と来ようとこっそり誓って、神社を後にしました。