観月の宴
大覚寺の写真の予定
写真はもうしばらくお待ちくださいね。



◆ ◆ ◆ 風流 ◆ ◆ ◆


嵯峨野にある大沢の池は古来から月の名所として有名で、今でも毎年中秋の名月の頃になると、

池のある大覚寺の境内では竜頭鷁首舟(りゅうとうげきしゅ:国語辞典参照)を浮かべて

管弦の宴やお茶会が開かれ、風流な秋の夜を楽しむことができます。

大覚寺は嵯峨御所(さがごしょ)とも言われて、その昔嵯峨天皇が別邸として住まわれた場所でもあり、

日本最初の華道「嵯峨御流(さがごりゅう)」発祥の地でもあります。



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この日はお茶会があって私も行ってきました。

9月の着物は「単衣(ひとえ)」なのですが、私は単衣の着物を持っていないので夏用の着物を着て行きました。

言われた時間に到着すると、先生や先輩方がもうほとんど準備を終えていらっしゃいました。

小さくなりながら手持ちぶさたでウロウロしていると、それを見兼ねたのか先生が

「お茶会が始まるまでにお舟に乗せてもらっていらっしゃい」と舟席券を下さり、

先輩方と4人で大ハシャギで舟のところへ行きました。



船着き場には巫女さんの格好をした近くの短大の学生さんたちが10人くらいいて、

準備に追われているようでしたが、無理を言って4人だけの貸し切りで舟を出してもらいました。

私は観月の宴も初めてならこんな舟に乗るのも初めてです。

着物の裾を持ち上げて舟に乗り込み、赤い毛せんの敷かれた舟席に正座すると舟が動き出しました。

船頭さんは若い男の人が前と後ろに一人ずつです。

しばらくすると船首の方に立っていた巫女さんアルバイトの学生さんが簡単な自己紹介のあと、

小さな紙切れにチラチラと視線を落としながら大沢の池について説明をしてくれました。

この大沢の池は造った池としては京都最古の池だとか、この池から眺める月を愛でた嵯峨天皇のことなど。



話を聞いていると別の巫女さんがいそいそと「鶴屋吉信」の栗とこし餡の入ったお饅頭を出してくれました。

それから点て出し(正式なお点前をしないで、お茶碗にお湯を入れてお茶を点てるだけの略式)のお茶をいただきました。

それが本当なのか、忙しかったから省かれたのかは謎ですが、10分くらいで風流な舟上のお茶席は終わりました。

船着き場に戻ると、まだまだ日も沈んでいないというのに10人くらいのお客さんが並び始めていました。



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本席の方へ戻るとそちらの方でもお茶会は始まっていました。

この「観月の茶会」ではふらりと立ち寄った一般の人にもお茶を差し上げるということで、

入り口で呈茶券を渡しています。

去年の話を聞くと、お茶室にはお客さんが二重にも三重にも入って、

1席で50服近いお茶を点てて、それが10席くらい続いたということでした。

ちなみに普段のお茶会ではよく入っても1席20人程度です。



どんなにか忙しくなるだろうと気合いを入れてお客様をお迎えしましたが、1席目は7名でした。

2席目は5名でした。3席目も…。やっぱり「観月」というと本席よりも舟の方が人気があるようで、

暗くなるに連れて舟席の方には長蛇の列が出来ていました。それでも本席のお客さんの中には

「さっき舟に乗ってきたんですが、こちらの方が羨ましく見えて・・・」と言って来て下さった方もいらっしゃいました。

お茶室から池を見ていると、舟にぶら下がった提灯の明かりが池にも映って2重にゆらゆら揺れていて、

山の端からは月も出てきてまるで別世界のような眺めでした。

お茶室にはクーラーが付いていましたが、少し窓を開けるといい風がいい具合に入ってきてホッと和むようなかんじでした。



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私のお点前のときも、お客さんは5名でした。

お茶会でお点前をするのはもう何度目かだったし、今回のお点前は難しいものではなかったので気楽なはずでしたが、

最初のところで柄杓を落としそうになり、それから緊張して手がプルプルと震えてしまいました。

一番近くに座っていたお正客さんは「きっと初めてのお点前なんだろうな」とでも思ったのか、

そんな私を優しいまなざしで見つめてくれていました。



お客さんたちの中にはきちんと着物を着て来ている人もいれば、

知った風な中年夫婦、ジーンズや短パンにTシャツ姿のカップルや、ハダシの青年、子供連れの家族など実に様々で、

作法も関係なく、懐紙も使わず手ずからお菓子を食べて、「開かれたお茶会」といった感じで、

普段は先生方やその社中さんに囲まれて、本当に震えながらお点前している私にしても随分気が楽でした。



こうしてお茶会は多分つつがなく終わり片づけに入ると、私も周りを見習っていっちょまえに割烹着を着てみたものの、

やっぱり勝手が分からずウロウロしているうちに全て終了してしまいました。

時計を見ると9時でした。池の周りには模擬店が出ていて、まだまだ終わりそうもありませんでしたが、

そんな熱気の中へ入っていく気力もなく、お茶室を出て大覚寺のバス停のところまで歩いていくと、

まだ欠け始めたばかりの丸い月がうっすらと霞がかって見えていました。

嵯峨野の辺りは高い建物がなく田園地帯も多く残っているため明かりも少なくて、

お茶室から垣間見た月よりもはっきりときれいに見えました。



平安の昔は、模擬店の明かりのない真っ暗な池に、天皇始め貴族たちが舟を浮かべて松明の明かりで弦楽を奏でさせたりしながら、

真っ暗な空に浮かんだ月を眺めていたことでしょう。

趣はいささか変わっても、こういう催しが今まで残っていてくれて当時を偲ぶことができるというのも、

また京都の魅力のひとつだと思います。



【行き方】
京都駅バスターミナルCのりばから、28号系統「大覚寺行き」で約1時間。終点下車すぐ。

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