| 弘法さん |
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| こんな人ごみの中でも目立っている私です(アヤシイ) |
毎月21日は、東寺(とうじ)の縁日「弘法さん」の日です。
この日は境内だけでなく、東寺を囲むお堀や道に沿って数百の露店がひしめき合い、
朝早くから大勢の人で賑わいます。
学生時代に京都駅のレストランでアルバイトをしていた時は、
毎月21日、とくに年末の「終い弘法」と年始の「初弘法」の日はお客さんも大入りで、
普段は夕方からのアルバイトも朝からかり出されるくらいでした。
よそ者の私は「弘法さん」と聞くとお年寄りの集まる骨董品市のようなものを想像していたのですが、
実際に行ってみると来ている人はまさに老若男女様々でした。
中には旅行者なのか留学生なのか外国人の姿も目立っていましたが、
どの人にも共通していたのは、何か買うとき値切らない人はいなかったということでしょうか。
もし値切らなかったらどうなるか。
一例、どう見てもウールなのに「原価20万円カシミヤ100%」と書かれた古着のコートを
言い値の2万円で買うことになるのです。
◆ ◆ ◆ ◆
出ているお店は大多数を占める骨董品(含まがいモノ)のほかに、
たこ焼きやたい焼き、韓国名物のチヂミなど食べ物の屋台ももちろんあって、
植木や鉢植え、日用品、衣類などのお店がどれも百単位で境内を埋め尽くしています。
普段はただ「だだっ広い」というイメージの境内が、まるで別の場所のようにお店と人でごった返し、
狭い通路を往来する人々の熱気は冬でも暑いくらいで、
その雰囲気は異国の「バザール」といった感じでした。
ゆっくり散歩がてらに来たつもりが、つい必死になって人ごみを掻き分け品物に近づいていたり、
特に何かを買うつもりではなくても、その熱気にまみれるとつい手にとって色々聞いてみたくなる、
そんな雰囲気がそこかしこにあふれていました。
◆ ◆ ◆ ◆
ところで、どこの縁日にも必ずと言っていいほどヘンなお店はあるものです。
この日もやっぱり見つけたヘンなお店はかなりヘンでした。
まずハブ酒のお店。
なんと傍らにはマングースの入った檻が置いてあって、それと一緒に蛇の尻尾が入っているのです。
言いたい事はわかるものの、天敵同士が闘うところを見た人は誰もいない様子。
うっかり「最初から尻尾だけ入れたんじゃないのー?」と無邪気なひとりごとを発したところ、
店主のおじさんがすばやく反応し、キッと鋭く睨まれました。あー、怖かった。
こういうところでそういうひとりごとは禁句のようです。
そしてそこはハブ酒を売っているお店のくせに、
「ハブよりもっとすごいものあるよー」といってクーラーボックスのようなものから取り出したのは、
なんと白黄色の鈍い光を放つ特太のニシキヘビでした。
でもそれは売り物ではないとのこと。何のために持ってきたんだろう・・・。
それから姓名判断のお店。
B紙6枚に細かい字でびっしりと名前が書かれていて、
それぞれ「いい奥さんになる名前」だとか「出世する名前」だとかに分けてあるのですが、
自分の名前を探そうと人が集まってくると、
いかにも占い師っぽいおじさんが、手に持った差し棒で紙をバシバシ叩きながら、
「今年運勢のいい名前はコレとコレとコレ!」と目にも止まらぬ早業で何かの名前を指し、
「見逃した人は占ってあげるから!」と見事な口上。
そこで誰も来ないとみると、今度は「じゃあ大サービス!ちょっとだけ手相を見てあげる!」
すると最前列に陣取っていたおばちゃんたちが一斉に手のひらを差し出しました。
「はいはい!きれいな手が見たいの!前には若い女の子来てください!」
この一言でおばちゃんたちは意外とおとなしく引き下がり、笑いながら歩き去っていきました。
結局お客さんはゼロ。これで商売になるのでしょうか。っていうか本当に占いできるんでしょうか。
でも私の名前はあったのかどうか、どのカテゴリに入っていたのか、確かにすっごく気になります。
あとはガラクタ屋さん。
東寺の縁日は別名「がらくた市」とも呼ばれているほどガラクタ屋さんが多いのですが、
本物かどうかは別として、家具や掛軸、茶碗などを出している正統派の骨董品屋さんに交じって、
これはアンティークとは言わないだろうと思われるお店もたくさん出ていました。
なかでも、これって売っていいの?と思ったのが、
段ボールいっぱいに入った手紙の束。全部個人宛で時期は大正から昭和初期にかけてのものでした。
それが一箱なんと4万円!
もしこれが売れるんだったら私も手紙残しとこうかなと思いました。新たな財テクかもしれません。
◆ ◆ ◆ ◆
ほかにもこれは売りものじゃないでしょう、売っちゃいけないでしょうと思うような
アブナイものやアヤシイものがたくさんあって、
見た限り、買っていくお客さんはいなかったのですが、
みんな同じように面白そうな顔をして「一応見といたろか」という感じなのが面白かったです。
お店の人も売る気があるのかないのか、どちらかといえば無いようでした。
商売よりも、ただそこにお店を出すことが楽しいのかもしれませんね。
お店の人も様々で、冷やかされて怒る人、笑う人、見向きもしない人、
見ているこっちが商売したくなるような人もいました。
帰りに通ったタイ焼き屋さんでは、小学校低学年くらいの男の子が2人で店番をしていて、
じゃんけんで負けた方が「いらっしゃいませ」を言っていました。
2人ともゲームみたいに楽しそうで、見ているこっちも楽しかったです。
東寺の弘法さん、何も買う気はなくても、行けば必ずおもしろいモノに出会えると思います。
一度覗いて見てください。ただし、スリには要注意です。