テキパキ
中学3年生の時でした。
隣のクラスに、学年でも人気者だったKくんという男の子がいました。
ある日の掃除の時間、私もKくんも廊下掃除の当番だったことがありました。
いつもふざけているKくんは、掃除の時間もやっぱりふざけていて、
ほうきを足に挟んだり、ぞうきんでキャッチボールをしたり、
傍目にも、やっぱり掃除しているようには見えませんでした。
そのうち隣のクラスの担任のタキ先生が廊下に出てきました。
そしてKくんを見つけると早速、「おいK!テキパキ掃除しろ!」と注意しました。
するとKくんは先生の方を向き、ほうきを手に持つと、
「テキパキテキパキ」と2回/秒くらいの速さで、
まさにテキパキと口を動かしながら言い、口と同じくらい早くほうきを動かしていました。
どうしても掃除をしているようには見えないその姿は、レレレのおじさんのようでした。
先生はからかわれて真っ赤になって、「さっさとやらんか!」と怒鳴りました。
すると今度は「サッサッサッサッ」とこれまた2回/秒くらいの速さで言うのです。
私は横から「今度こそ手が出るのかな」とハラハラしながら見ていたのですが、
いつものことだからか、先生は諦め顔で中へ入っていきました。
タキ先生はまだ20代中頃の若い英語の先生で、陸上部の顧問をしていました。
わりと厳しい先生でしたが嫌われていたわけではなく、
なめられていたわけでもないのですが、ただ耳がチャームポイントだったので、
生徒の間ではドラゴンボールのピッコロ大魔王からとって
「ピッコロ」と呼ばれていました。
先生が中へ入るやいなや、Kくんが調子に乗って今度は「ピッコロピッコロ」と早口で言うと、
なんとピッコロが、いえ先生がまた戻ってきたのです!
Kくんもそれにはさすがに驚いたらしく、金魚みたいに大きな目をさらに大きくしていましたが、
それでも懲りずに「テキパキテキパキ、サッサッサッサッサッ」と言いながら手を動かしていました。
そして先生がなにも言わずに再び中へ入ると、Kくんの口調がいつのまにか
「テキパキタキっ、テキパキタキっ・・・」に変わっていました。
なんて語呂がいいんだろう・・・。私は横でそのリズムの良さにうっとりしていました。
そのことがあって以来、どうしても「テキパキ」という言葉を聞くと、
つい、「テキパキタキっ、テキパキタキっ」と早口で口ずさんでしまうのです。
Kくん、今頃どうしてるかな。