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人間の感情や直感というものはアナログである。従って、直感を大事にする人は大抵アナログ思考者であると言えるが、専門家というのは概してデジタル思考に陥り易い。そして、デジタル思考である専門家には人間の感情を理解出来ない人や発想の転換が鈍い人が多いと言えそうである。
ところで、専門家とは一体何だろうか?一芸を究(きわ)めた人だろうと解釈しているが、ひょいと頭に浮かんだことを「これは出来ないか?」と専門家に質問すると、大抵十中八九「それはできません」という答えが返って来る。専門家というのはデジタル的垂直思考法で物事を考える人が多く、理屈が通らないことには「NO !」と言いたがる傾向があるのである。
実際は、「理屈が通らない」のではなくて「自分の思考能力を超えて」いるに過ぎないのだが、概して専門家はそのことに気付いていないかあるいは敢えて気付こうとしていないかのどちらかである。日露戦争の時、満州軍の参謀総長でもあった陸軍の児玉源太郎大将は、そのことをよく知っていて過去に何度も経験していたらしい。かって、こんなことがあったそうである。児玉大将は参謀本部で戦略戦術の専門家たちに対して、
「諸君は昨日の専門家であるかもしれん。しかし、明日の専門家ではない」
と怒鳴ったのだそうだ。余程、腹に据えかねたのだろうが、「昨日までは専門家であるかも知れないが、明日も専門家であるとは言えない」という発言は言い得て妙の至言である。大将の位まで到達した人にしか言えない言葉であるかも知れないが、言外に時代の変化を敏感に掴み取れと言っているのである。児玉源太郎大将は、高度なあるいは人に優る専門知識というものは得れば得るほど保守的なものであることを看破し、専門家の思考範囲が如何に狭いかを痛感していたのである。
硬直した戦局や不利な戦局を打破するためには専門家の垂直思考的戦略では解決できないことが多いために、児玉大将は専門家が発想しない「あっ!」と思わせるような水平思考的戦略を期待したのである。しかし、彼らがいつものような答えしかしなかったために、常日頃から持っていた専門家の閉塞的思考に対する不満意識が爆発し、児玉大将をして思わず怒鳴らせてしまったのであろう。
デジタル思考者の最大の欠点は、デジタル的思考がアナログ的思考に優ると思い込んでいるために、現場というアナログ的思考で見なければならない情報を軽視するところにある。
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