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営業費用は、コストなのか投資なのか? 

 コスト意識あるいはコストパフォーマンスという言葉が横行している。コストパフォーマンスとは日本語に訳すれば「費用対効果」ということになる。コスト意識は「原価意識」である。しかし、果たしてどれくらいの人たちが言葉の意味を正しく理解しているだろうか?ちょっと心配である。

 コストとは「経費(費用)」である。従って、原価に入る(原価算入)。しかし、同じように経費に見えるものが実は「投資」だった場合は「経費」ではなく「資産」となる。従って、この場合は原価には入らない(原価不算入)。開発業務から発生する費用に関してはこの考え方はほぼ浸透しているが、これが営業費用となると、そういう見方をする人は殆どいなくなる。

 製造業の場合は、「試験研究費」という費目があるが、概ね製造に係る全ての経費はコストであると見てよい。従って、コストダウンしなければならないとなると、当然、製造に係る直接経費や福利厚生費などの間接経費について徹底的な無駄の排除が要求されることになる。直接経費や間接経費は減らせばその分コストが下がる、という意味では「目に見える」経費であるが、案外、見過ごされるのが「目に見えない経費支出」である生産性である。

 経費支出が無くても、生産性が落ちればコストは上昇する。従って、時間当たりの生産性や一人当たりの生産性が管理される。一人当たりの生産性は人間の意欲にも大きく左右されるけれども、そういう意味で生産性はコストであり、コスト管理の重要な管理項目ということになる。

 労働装備率の高い工場においては、機械の単位時間当たりの生産性が問われ、労働装備率の低い工場では一人当たりの生産性や時間当たりの生産性が問われることになる。工場敷地の広い工場では、一坪当たりの生産性が問われることもある。

 そして、生産性と密接不可分の管理項目は不良率管理である。如何に効率よく生産しても、販売できない不良製品であれば時間と費用と人件費を掛けた分以上の損が発生する。即ち、本来利益を生むべき付加価値がかえって大きな損害を発生させる訳である。そこで、不良率1%がいくらに相当するのか、金額に換算して把握しておかなければならない。そして実務的には、容認できる不良率を設定して、日々、あるいは午前と午後、専任の担当者がチェックして廻るということになる。品質維持のための工程管理上の品質管理である。

 しかし、生産性は製品の生産だけにとどまらない。民間企業である限り、開発も、応用技術も、色々な切り口から生産性が問われることになる。場合によっては、管理部門も営業部門も生産性的な発想で管理される。こうなると、人間性を無視した管理が行なわれる危険性があることは否定できないが、高収益を挙げ続けているトヨタグループなどは管理も業務も営業も全て生産性管理が徹底しているようである。

 また、実際の場面において、現在の製品のコストを下げるという点においては、一つ一つの部品や外注加工費を安くしようとしても、これには物理的な限界がある。従って、思い切ったコスト削減を行なうためには、設計段階から「部品点数を減らす、作業工数を減らす、過剰仕様を適正化する」といった設計思想を持って、既成概念に囚われない柔軟さが大事である。部品点数を減らすには、複数部品を一つの部品に統合したり、場合によっては部品の持っている機能をケーシングに代替させるといった発想の転換が必要となることもある。

 製造業務や開発業務については以上に述べたようなことでコスト削減効果はかなり期待できるが、これが営業費用になると、経費なのか投資なのかという点が極めて微妙になる。営業活動に係る経費を全て単純にコストとして見てよいのか、という点である。景気が悪くなったり、利益が出なくなったりすると、真っ先に出張回数を減らす会社は多い。経費が目に見えて減ることでコストパフォーマンスがよくなったと考えてしまうのであるが、それによって失われるデメリットを見落とさないようにしなければならない。

 旅費をケチることは得意先との関係を弱体化させ、マーケットのニーズも入って来なくなるというような点である。マーケットニーズなどのマーケット情報が減少することは、市場が求める製品を開発し提供することが企業発展と存続の使命であるメーカーにとっては由々しき問題となる。情報が激減することは企業の発展を阻害し存続をも危うくすると思わなければならない。

 従って、営業の場合、顧客訪問や出張に係る費用をコストと考えるか、情報収集やマーケットニーズの把握のための投資的経費と考えるかによって、営業部門の活性化にも影響し、同時に営業マンの活動内容や活動意識が大きく変わると言える。

 そこで問題になるのは、どのような営業スタイルが投資的活動で、どのような活動が費用的活動に当たるか、という見極めである。確かに、営業マンの行動を見ていると、販売店の営業を補佐することを営業活動と思い込んでいるとしか思えない人もいる。これは営業のあり方で言えば、メーカーが販売店に対して行なうサービス営業、いわゆるディーラーヘルプと言われている戦術営業で、これはこれで大事なことであるが、どちらかと言えば費用活動に入るものである。従って、コストパフォーマンス的にはディーラーヘルプのあり方についての改良改善が課題となる。

 投資的営業活動というのは、一年先、二年先の水準を描き、その絵に向かって戦略的に活動する営業活動ということになる。この活動を削減すると、往々にして営業部門の活力が低下し、営業マン個々人の意識も落ち込むことになるので要注意である。

 蛇足であるが、近年、坪単価の高い都市部に事務所を構えている営業所においては、営業マンの専用机を廃止するところも出て来ている。大広間のようなスペースに会議机のような大机を置き、営業マンはどこでも自由に座ってパソコンを開いて仕事をするという発想である。

一見、効率的で合理的に見えるが、サラリーマンになったとき「これが自分の机だ」という感慨を思い浮かべると、「専用の机がない」ということが、営業マンにどのような心理的影響を与えるだろうか、という点が気になっている。即ち、社員の机に対する経営者の発想が「費用」的に対処されていることが、営業マンに「会社は我々を投資ではなく、費用としてしか見ていないのだろう」と思わせてしまう恐れがないだろうか、ということである。


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