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企業の使命とは継続することであり、経営の使命とは健全なる発展と次代への承継である。承継するものは商品であったり、販売網であったり、企業文化であったりするが、その本にあるのは人々が持っている使命感を発揮させる風土ではないだろうか。そういう思いを抱くようになったのは30代初め、盛岡の工場を建て直すために赴任した頃である。以来、その思いは時とともに段々強くなっていった。
アメリカの小さな旅客航空会社であったサウスウェスト航空を大会社に育てたテディー会長は「職場は楽しいところでなくてはならない」という信念の人であったし、佐賀の禅寺天祐寺の海音和尚は「好いた事をして暮らすべきなり。好かぬことばかりして、苦を見て暮らすは愚かなることなり」という言葉を残している。また、「君子は先ず徳を慎む。徳あればここに人あり、人あればここに土あり、土あればここに財あり、財あればここに用あり。徳とは本(もと)なり、財とは末(すえ)なり」という論語の言葉もある。
企業には哲学が必要である。その哲学が文化となり風土となる。そして、その風土が個々人に使命感を育てる。健全な風土は健全な肉体と同じで、自然治癒力と自浄化作用を有している。この風土を造るのは経営者自身であることは言を俟(ま)たないが、その風土を育むのは組織に属している全ての人たちである。全員が楽しく働ける風土を皆が心して作ろうという意識と意欲を持ち続け、実現のために努力することが大事なのである。誰かが造ってくれるだろう、風土作りは上役の務めだ、と他人頼みすることなく、自から皆のために、という使命感を持つようになれば立派な風土が生まれる。
その使命感は個々人の自信から生まれる。そして自信は、言いたいことが言え、やりたいことがやれる自由闊達な風土から生まれる。言いたいことが言える、やりたいことがやれる、という風土とは是々非々の論争や論議が活発に交わされる(これを葛藤と言う)風土ということである。「葛藤の風土」が想像力を育み組織に活力をもたらす。
言うだけでは駄目である。日本人の価値観では「男は黙って・・・」という「不言実行」精神が長い間美徳とされて来たが、段々、日本人の価値観も欧米人的になって来た。まだまだ多くの日本人は「男は黙って・・・」という価値観を好む人の方が多いが、これでは会議は成り立たないし、共有・共感も不足する。ビジネスには「有言実行」が大事である。論語的に言えば、陽明学精神ということになる。一度言ったことは、やらなければならない。言いたいことが言えるということは言い出した以上はやらなければならない、という枷を自らに架けることである。人は人の行動を見て、随いて来るのである。
こういう中では当然失敗も起こるが、それはそれでよい。成長や発展は、試行と錯誤と挫折を繰り返しながら、即ち上っては下がり、下がっては上がりを繰り返しながら少しづつ上昇する。これが成長や発展の真の姿であり、言葉を変えれば挑戦ということである。右肩上がりに一本調子に上り続けることなどないのである。
人間も企業も、最初は小さなものへの挑戦から、成長するにつれて段々大きく困難なものへの挑戦に変化する。その間には沢山の壁がある。それらの壁を乗り越えることによって人間は大きく成長する。しかし、時間も掛かり環境も関わって来ることを忘れないで頂きたい。やりたいことが全て成功するとは限らないからである。
失敗は一時的には企業に損失をもたらすかも知れないが、大きな目で見れば人間を大きく成長させ、いつか必ず大きな利益をもたらす筈である。「失敗は成功の母」というように、個々の失敗を咎めることは避けなければならない。失敗を咎める風土であるか、温かく許してくれる風土であるかということが、結果として個々人の自信を育む風土となる。言い換えれば、自信を育む風土が挑戦的風土ということである。
挑戦とは、未だ経験したことのないことや未知の事柄・分野へ挑むことである。経験とは実体験と疑似体験を意味するが、疑似体験は伝記や賢人の言葉や名言・箴言から得られる。未経験の事柄の中には、経験や勉強で得た知識の範囲内で十分予測可能なものもある。しかし、人がやったことをひたすら踏襲しているばかりではその人を超えることは出来ない。現状を維持するだけが精一杯で、人間の成長には何の糧ももたらさない。多くの誰でもが予測できるようなものは挑戦という意味においては極めて低い次元のものである。
未経験あるいは未知というものに対して人は本能的に不安感や恐怖心を抱く。しかし、ビジネスにおける未経験・未知というものは生命まで奪うものではない。挑戦すべきと直感したときは、失敗の懸念を振り切って勇気を奮い立たせ、敢然と挑戦することが大事である。勇気とは正しいことを敢然と実行することである。数多くの失敗と成功の体験を蓄積することで、予見力と決断力と実行力が身に付く。このような気持ちで新しいものに積極的に挑戦していただきたい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 雑感 人生の一区切り、定年を迎えて 雑感 HOMEPAGE の写真を一新 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 Enter From 検索 UpDate & Back Number Index Previous Home Profile