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家康公遺訓と言われているものである。日本中の観光地で色紙風になったり染め出しの暖簾などのお土産にもなっている有名な言葉である。14代前の徳川家康のこの言葉を旧幕臣であった勝海舟や山岡鉄舟は大政奉還後の明治政府においてもバックボーンとしていたようである。「鉄舟随感録」(安部正人編:国書刊行会)という本を読むと、勝海舟は、
「諺にも、『遥かなる山は望み見し得るも、近き睫毛(まつげ)はかえって見ることは出来ない』と言うは、ものの例えだが、
しかし『内に火あれば外に露わる』というは、古今の格言だよ。縮めて言うてみれば、『内修(おさ)まって而して後初めて
外に及ぼす』という訳さ。だからごらんよ。大学(注:中国の四書)にも、『天下を治めんと欲する者は、まずその極意は我
が意を誠にせよ』とあるではないか。俗人等は、単に外部に露われたる、華々しき現状のみに着目して、如何にしてか
くの如き大盛(注:徳川三百年)を成就せしめたのか、内に深く潜まっている大原理を極究しない。それ故に、今時のノラ
クラ人形には、この呼吸が容易に分からないのだ」
と明治の為政家たちが家康公遺訓を理解していないことを慨嘆している。一方、山岡鉄舟は、
「真に千古不磨の格言と言うべし。いやしくも人間たらんものは、この心をして、これを大いに用うれば、天下万衆に
長たるを得ん。これを小に用うれば、即ち一身一家を斉(ととの)う事を得べし。感服三嘆」
と最高の処世訓として絶賛している。やはり、人間というものは「軽い荷物」では大きく成長できないもので、常に重い荷物を自らに課さなければならないのである。最後の「及ばざるは過ぎたるより勝れる」という言葉には疑問を抱くが、「及ばなくても過ぎたるよりは良いと自得しろ」という程度に解釈するのが本当だろう。
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