∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 以久遠氏 Beauty,Business & Favorites    世相雑感    <82>VOL. '05-10/ 2005.10.01 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

国民が「NO!」と言った郵政民営化とこれからの日本

 あっと驚くような結果で総選挙が終わった。これほどの大勝利を予測した人はいないだろう。自民党と公明党の与党で3分の2を超えるという歴史的な地滑り的大勝利であるが、冷静に思い直してみると、小泉首相や武部幹事長の選挙中と選挙後、そして国会での発言内容が微妙に変化している。

 そもそも今回の総選挙は、衆議院は郵政民営化法案を可決したにもかかわらず、参議院が否決したために衆議院を解散するという分かったような分からないような妙なものであったが、早く言えば、小泉総理自身の自らの目的達成のためという歴史に残る暴挙によって行なわれたと言っても過言でない。

 果たして、今回の解散総選挙の本当の目的がどこにあったのかは定かでない。小泉首相はかって高齢を理由に中曽根・宮沢元首相を引退に追い込んだように自分に不利益な有力者を毛嫌いする癖があるので、巷間で囁かれているように、橋本派、亀井派などの強大派閥の解体を目的としたのではないかという面も否定できない。

 衆議院が可決した法案を参議院が否決するというのは二院制議会政治においては極めて当たり前のことであり、当然、提案された法案は廃案とならなければならない。しかも、法案の修正をも認めないというのは参議院の存在そのものを否定するものであり、また立憲制議会制民主主義に則る憲法の精神を否定する行動であり解散権の濫用である。これを時の総理が発言するというのは独善的でありファッショ化を懸念させ由々しき事態であると言わざるを得ない。違憲の疑いが濃厚である。

 選挙自体は、独裁制や大統領制を好む小泉首相ならではの喧嘩戦法によって与党の大勝利となったが、小泉首相が選挙前から選挙中に声を涸らして国民に訴えていた言葉を忘れてはならない。参議院で否決された時、「郵政民営化を国民に問う」と語り、小泉首相も武部幹事長も「郵政民営化について国民に信を問う」と、暗に「国民投票」であるかの如き選挙であると公言した。「郵政民営化に賛成ならば自民党か公明党に投票してくれ」と絶叫していた姿を国民は覚えている筈である。これは国民の目を眩ますまやかし以外の何物でもない。しかし、選挙後、彼らの口から「国民投票」という言葉は一言も聞かれなくなった。何故か?

 その理由は、得票数にある。それがために「国民投票の結果」という言葉を使えなくなったに過ぎない。当選数だけ見れば、自民党の圧倒的勝利であるが、小選挙区制という選挙制度と得票数について考慮する必要がある。小選挙区制という中で「YES」か「NO」を問えば、「YES」票は自民党と公明党の二つに集約されるのに対し、「NO」票は民主党、共産党、社民党、国民新党、新党日本の五党と民営化反対の無所属の六つに分散することになる。このような中では小選挙区制の結果は当然「YES」派が大勝利を収めることになる。

 その結果、早くも小泉首相も武部幹事長も「国民投票」という言葉は伏せてしまい、「国民は民営化を強く望んでいる。その結果が過半数超の勝利となった」と議員数だけを大宣伝している。確かに、当選議員の数だけ見れば与党の圧勝であるが、果たして本当に国民は郵政民営化に賛成したのだろうか?

 とんでもない!小泉首相の「郵政民営化、賛成か反対か」という焦点を絞った選挙戦略が功を奏したことは否定しないけれども、国民の過半数は民営化に「NO !」という意思表示を示しているのである。と言うのは、国民投票という捉え方で今回の選挙を分析した人たちが大勢いるらしい。彼らの試算によると小選挙区投票では反対が3400万票強、賛成が3300万票強という結果で、どうやっても30万票以上反対の方が多いそうである。

 従って、選挙としては自公の大勝利であるが、郵政民営化についての国民投票という意味では僅差で敗北したことになる。即ち、国民投票として冷静に見れば、国民は「郵政民営化には反対である」という意思表示をしているのである。しかし、小泉首相や武部幹事長がこの事実を謙虚に認める筈はない。いよいよ国会が開会し、小泉首相はたった14分間という短い所信表明演説を行なったが、案の定、郵政法案を無修正で通す肚(はら)である。これからは「国民が求めている」改革を推進するという大義名分で、改悪が進められることになるのだろうと危惧している。

 このような中でやりたい放題の政治にどうやって歯止めを掛けるかが最大の課題となったが、そもそもこの小泉ムードの流れ作りに大きな貢献をしたのははからずも体制の批判者である筈のメディアであったと言っても過言ではあるまい。選挙期間中、小泉首相と武部幹事長と「くの一」忍者ばりの女性刺客ばかりを政治報道番組というより芸能ゴシップ情報的に取り上げ、毎日毎日、朝から深夜まで面白おかしく垂れ流していた。

 メディアのこの放送スタイルが無党派層や政治無関心層を投票に向かわせて投票率を押し上げ、結果として自民党の大勝利をもたらしたのだろうと思うが、皮肉なものである。特に20代の若者たちを投票に行かせたという点はメディアの功績と誉めて良い。しかし、彼らは殆ど選挙に行ったことのない人たちであるから、恐らく彼らの大半は「これからの4年間の政治を委ねる人」というよりも、選挙期間中のカッコよさのみを見て投票しただろうと思う。

 選挙候補者よりも「くの一忍者の頭領」である小泉純一郎の姿を思い浮かべていたのではないだろうか。見知らぬ土地で、郵政法案の中身など殆ど無知にもかかわらず「郵政民営化に賛成です」と声高に絶叫するだけの落下傘候補者たちがいとも簡単に10万票近い票を得るなど、異常である。

 メディアは煽ることも大事であるが、投票は「何を基準にして選ぶか」ということをキチンと教えてあげる啓蒙作業もメディアの役割である。大新聞の政治部長や論説委員などの発言を聞いていても、体制寄りの迎合的発言が多く、メディアの役回りを放棄しているようにしか聞こえなかった。もっと真面目に現在の政治状況を分析解説し、国民に日本の将来を考えさせるような報道を心掛け、小泉政権の4年間の事跡をマニフェストに沿って評価を下していたら、流れが変わっていたかも知れない。

 しかし現実として、今後4年間というもの、参議院も存在価値が無くなり、総選挙も4年間は無いと考えなければならない。日本は巨大与党に国政を牛耳られることになる。次は本丸の憲法改正である。前原民主党も改憲であるため極めて憂慮すべき状況となった。こうなれば世論を国政に反映させるにはメディアに頼るほかないだろう。メディアには国会周辺で繰り広げられているデモなども真摯に報道する姿勢を期待し、日本が誤った進路を採らないように政治の番人としての自覚を持って監視と批評・非難精神を発揮して頂きたい。


Enter From 検索  UpDate & Back Number Index  Home  Profile & 世相雑感