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  選  

 来月20日には新しい総理大臣が決まるというのに、谷垣禎一氏が一人立候補しただけで、8月に入っても政界に動きが出て来ない。内外の政治経済情勢はこの一月の間に目まぐるしく激しく変化している。ブッシュ大統領の支持率も低下して、今後の日米関係に微妙な影を落とし始めて来た。靖国問題も昭和天皇の発言メモが露呈し、中国や韓国との関係も微妙なムードである。イスラエル・レバノン問題はオイル危機を増幅させ、折角立ち直りかけた経済に暗雲が立ち込めそうな気配が漂い始めた。

 国連の安保理は、ブッシュ大統領が名指しするテロ国家、イランと北朝鮮を追い詰めようとする危険な動きを示し始めている。国内には異常な凶悪事件が頻発し、国民年金の加入期間問題は社会保険庁への不信感を増幅し国家への不信感へと発展しそうな状況である。生活保護者数は史上最高だし、年収が200万〜300万という貧困世帯数も40%を占め、強者と弱者の二極社会は社会不安というより社会恐慌的な雲行きになって来ている。暴動が起こらないのが不思議なくらいである。

 このような内外の難問題が山積する中にありながら、テレビや新聞は、小泉後継総裁には「この国をどうリードするつもりなのか?」を語ろうとしない安倍晋三氏に決まったかのような無責任論評に明け暮れている。確かに、総裁選の流れは安倍晋三氏優勢のまま流れているが、「この国をどうするのか」「どうしたいのか」という政治理念を明らかにしないまま、ムードで新しい総理大臣が誕生するというのは好ましいことではない。

 それを正すのは、言論という強大な力を持っているマスメディアの外にない。マスメディアには、総裁候補者に「政治理念と政策」を国民に表明させる役目がある。それが出来ないのなら、論評する資格はない。安倍晋三氏が「自分の思い」を語らざるを得ないような論陣を張らなければならない筈である。そこを質さず、ムードに乗って次の総裁として持ち上げるのは幇間(ほうかん)に如かず、マスメディアとしては失格であろう。

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