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「量り売り」カレーSHOPと
テレビを見ていたら、最近、東京では「量り売り」が拡大しそうな気配らしい。「量り売り」と言えば、八百屋や肉屋や魚屋の量り売りが代表的だが、生鮮以外の分野での「量り売り」というのは珍しい。新宿や銀座などでは既に数年前から高級チョコレートの量り売りが行列が出来るくらい流行っている。食べたいものを食べたい分だけ買える、という無駄の無い合理性が「モッタイナイ」というエコトレンドとユーザーニーズにマッチしたのかもしれない。
「流行りそうな気配」というのはカレーライスレストランである。カレー専門のレストランが「量り売り」というのが目新しい。JR山手線御徒町(おかちまち)駅近くの「カレーボーヤ」という店でカレーライスを秤で計量して販売しているらしい。ご飯も、ルーも、トッピングも、全て「1g=1円」という値段設定だそうである。「ほんの少しだけ食べたい」お譲さん方や、「腹一杯食べたい」サラリーマン諸君には親切で喜ばれているそうである。
実は私自身、二昔以上も前にアメリカの外食レストランで同じような「量り売りランチ」を経験していた。1983年2月に初めてロスアンジェルスを訪れたときのことである。わが国は「商社冬の時代」と言われていた大不況の中で、その打開策として大手各社に「近未来事業部」という企業内ベンチャー部署が雨後の筍のような勢いで誕生していた。私が在籍していたN社は木質系住宅部材を製造販売していたが、住宅着工軒数が年々減少していた頃で住宅産業も不況の真っ只中にあった。N社も「何か打開策はないものか」と頭を悩まし、新規事業開拓の部署が新設された。
私はその部署の初代担当になったが、「さて?何から手を付けようか?」。担当常務のA氏と相談し、当時、アメリカは日本より8年〜10年進んでいると言われていたので、日本経済の10年後を予測するにはアメリカの現実の姿を勉強するのが手っ取り早いだろうという結論に達した。当時、アメリカのニュービジネスはニューヨークでプランニングされ、プランを実現する場所がロスアンジェルスと言われていた。そこで、A常務と二人で、ニュービジネスが最も先端を行っていたロスアンジェルスを訪れた。
ローズボールで有名なロスアンジェルス北部の高級住宅地、パサデナのヒルトンホテルを拠点にして、現地でレンタカーを借り、通訳兼ドライバーを案内役に雇って視察した。住宅部材の工場やコンドミニアムタウンや住宅部材販売店などを訪れて質問と視察をする途中、昼食時、案内人が「面白いレストランがあります」と案内してくれたレストランが「量り売り」であったのである。その店の名前は忘れてしまったが、ロスアンジェルス市郊外のセンチュリータウンのショッピングセンター内のファミリーレストランであった。かなり大きな店で「秤付きのレジスター」が三台あり、お客も多く繁盛しているように見えた。
そのレストランには、食パン、クロワッサン、ロールパン、バター、ジャム、チーズ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、ハンバーグ、スクランブルエッグ、フライドポテト、各種野菜サラダ、コーヒー、オレンジジュース、グアバジュース、ヤサイジュース、ホットミルク、アイスクリーム、メロン、バナナ、パイナップル、フルーツ、…などなど、実に豊富な品揃えで、ヒルトンホテルやシェラトンホテルのバイキング朝食並みの品揃えに驚かされた。直感的に商品の種類が多すぎると思い、A常務と「発想はユニークですが、経営的に成り立つのですかね?」と頭を傾げ訝ったことを覚えている。
先ず、入り口でトレーとお皿を手にする。料理やフルーツなどの食材が並べられたテーブルから好きなものを好きなだけ取ってレジカウンターに持っていく。レジカウンターに電子秤が置いてあり、その上に載せる。「××g」と総重量が表示され、同時にその重量に「g単価」を掛けた値段が表示される。勿論、トレーとお皿のの重量は風袋引きされ、食料品のみの重量が表示されるが、単品価格の精算ではないので実にスピーディーで簡単明瞭である。「1gいくら」の設定だったか覚えていないが、それほど安くはなかったように思う。昼食にハンバーガーを食べているようなクラスのお客は殆どいなくて、皆、きちんとした身なりの年輩者のカップルが多かった。
水分の多いものは重く、パン類は軽い。量を摂って安くあげたければ軽いものを多く取ればよいし、肉類やフルーツ類を少量すつ多種類の食事を楽しめば、結構良い値段になる。しかし、好きなものを好きなだけ選んで重量分の値段を払うシステムというのはお客さん本位の商法で、実に新鮮な印象を受けた。小食家にも大食漢にも、老若男女それぞれに受け入れられていたように感じた。
このような「量り売り」商法は流行るだろうと予想していたが、その後アメリカでも流行した気配はなく、日本には上陸さえしなかった。すっかり忘れてしまっていたら、20数年経った今頃になって突如、カレーショップに登場したのに驚いている。これも、世界中に「MOTTAINAI」運動が広まりつつあるエコロジー時代の寵児かも知れない。懐かしい親近感を覚えたので機会を見つけて、一度、訪れてみようと思っている。