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参院戦大敗後、第二次「美しい国」内閣が誕生した。ところが、安倍総理は何故か、「美しい国」という言葉を殆ど口にしなくなった。安倍総理の「美しい」という言葉自体が抽象的過ぎて曖昧であることを、先般の参院選挙で全国を遊説廻りした際、「美しいの」は一握りの大都市だけで、その外の都市、市町村が「美しい」とは程遠いむしろ「鬱々と苦し」んでいる実態を実感としてやっと理解できた所為ではないだろうか。
昔から、概してわが国の総理以下の閣僚は海外諸国への外遊には積極的だが、国内各地へは大災害でも起こらない限り足を運ぼうとはしないように見える。殆どの県知事が、管轄行政地域は全域隅から隅まで悉く足を運び、老若男女の県民の声に耳を傾けて得た情報を行政に活かしているのとは大違いである。国政に携わる総理以下閣僚は大いに見習うべきであろう。
これまでの数十年間と言うもの、わが国の国政は財界との二人三脚で「追いつき追い越せ」の鉢巻きをしてひたすら経済至上主義で邁進して来た。経済至上義は大企業最優先主義と言い換えた方が分かり易いが、そのお陰で、イギリス、フランス、ドイツ等のヨーロッパ諸国を追い越し、今ではアメリカに次いで世界第二位のGDP大国となり、国力が増したことは間違いない。経済発展の原動力は日経連や経団連との密な情報交換に依るところが大である。
しかし、一人当たりのGDPで見ると、1位ルクセンブルグ、2位ノルウェー、3位スイスとヨーロッパの狭い国土の中小国が抜きん出ており、国内経済が大企業に依存せず国内全域に渡って経済活動が活発であることを示している。わが国の国政が大企業向けに偏重し、その陰で全国津々浦々に存在する50万とも70万と言われる中小企業への経済政策を二の次にし疎んじて来たことが、地域格差や所得格差等の現在の様々な格差を産んだ原因である、と言える。
地方の情報収集は県知事や官僚に任せ、閣僚自らは彼らからの耳情報だけに頼って地方交付金をばら撒いてお茶を濁し、自らの目と耳で地方の実態を把握しようと努めなかったことが地方を置き去りにし、格差を拡大させてしまった。ヨーロッパの中小国の姿は、わが国の採るべき道を暗示しているように思える。国は裕福になったが、格差が開いた分、弱い国民ほど貧困に陥ったのである。(ちなみに、アメリカは4位で日本は6位。1位ルクセンブルグの65%に過ぎない。)
格差の拡大は社会のあらゆる面に歪みを生じさせた。特に所得格差の拡大は、「拝金主義」と「自分勝手主義」などの「強者主義」の風潮を蔓延させ、「弱い者」を踏み台にしてでものし上ろうとする者を誕生させた。そしてそれは同時に、人の心を荒ませ、社会規範の礎である「価値観」にも格差の増幅を来たさせ、崩壊に向かわせている。崩壊しつつある価値観とは、正と不正(邪)、善と悪、是と非、良と悪、真と偽、正義と不正義、公平と不公平、利他と利己、礼と無礼、等々の二極に分け得る価値観である。それにつれて、陰湿で凶悪な「人の心を蝕む」ような犯罪や「すれすれ」の犯罪が増えた。
弱者に対する「愛」の心が失われてはならないことは言うまでもないが、価値観の崩壊は日本という国のアイデンティティを喪失することを意味する。嘆かわしいことだが、人の心から「バレなければ罪ではない」、「自分さえよければ」、「悪いという根拠は?」、「何が悪い!」といった「開き直り」価値観が社会全体に蔓延しつつある。日本人は古より「恥」の美学を「生き様」のバックボーンとして来た民族であるが、まるで異常発生した害虫に蝕まれるように、倫理観や道義観が喪なわれつつある。
殊に、最近の政界・官界・財界の「金絡み」の犯罪は目に余る。彼らが一見、真面目で実直そうに見えるだけに、一層、恥知らずの浅ましさが際立ち、現代が想像以上に「病んだ社会」になっていることを思い知らされる。これを解決するには、国民の気持ちに「裕(ゆと)り」ある「豊かさ」を実感させる政治が必要であろう。それには経済政策によって得た世界第2位のGDPを、格差是正と教育のあり方に再投資するくらいの政治的英断が求められる。家庭教育は徳育であり、学校教育は知識と創造性教育であり、塾教育はこれらを補填・補強教育でなければならない。これに政治がどのように関わるか、が課題である。
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