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昔も今も、「偽ブランド」商売が絶えないが、昔は名門老舗に不正は殆ど無かった。ところが最近の「ブランド」の犯罪の多さには驚かされる。過去にも明治乳業、雪印乳業、森永乳業など多くの名門企業に、「名門」というブランドに胡坐(あぐら)を掻(か)いて、善良な消費者を裏切り続けた経営者がいた。その度に、関連法律が改正され、あるいは新たに制定され、防御策が図られて来た。にもかかわらず、依然として「嘘」が絶えない。今年だけでも「白い恋人」、「赤福」、「御福餅」、「吉兆」、「ミスタードーナツ」などの名門の不正が顕かになっている。超の付く名門「吉兆」までも、である。
しかもその殆どが、表では「長い歴史と輝かしい伝統」を守り続けていることを「売り」にしながら、裏では、使用材料の嘘、消費期限の嘘、賞味期限の嘘、回収廃品の再利用、製造手順の嘘、製造機械の清掃不備、等々…、平然と消費者の健康を脅かすようなことを長年にわたって行なっていた。全て健康と生命の安全に関わる事項ばかりである。そのどれも、誰が考えても直ぐバレるような稚拙なゴマカシばかりである。「偽ブランド」のバッグ販売よりも遥かに質(たち)が悪い。
こんな単純な悪事が、どうして長年にわたってバレなかったのだろうか?雇われ社長の企業の場合、社長在籍年数は長くても10年だが、オーナー系企業の場合、大体1代20年〜30年と長いので、不祥事がバレるのが遅く、20年も30年も続いていることがある。大体、企業が急成長・急拡大したときに不正が発生していることが多い。従って、急拡大した社業を承継し維持している社長も絡んでいると見て間違いない。当然、「知らなかった」ということはあり得ない。なのに、長い間「バレなかった!」というのは興味深い。内部告発をする従業員もいなかったということは、従業員に対する待遇がよく、労働問題も殆ど無かったのだろう。
企業が200年も300年も続くという理由とは、長い歴史を持つ名門企業には代々人格識見ともに優秀なトップに恵まれ、彼らによって不正を排除する経営と品質向上を究める経営が営々と続けられ、長い時間の中で自然と誰もが認める「企業の文化」を確立して行ったところにあるだろうと思う。その場所で代々にわたって築き上げられた「○○屋さん」という信用である。特に保存や移動の難しい生菓子の場合、材料にも限りがあり、新鮮さや保存方法にも限界があり、味わうにも日持ち期限がある、という制約があり、一般的に生菓子は大量販売に適した商品ではない。
だから昔は、企業の運営と存続に必要な利益が得られれば良しとしていたところが多かったが、近年は徒に「巨大利益」を求める風潮が強くなっている。その癖、「伝統」と「文化」を口にすることだけは忘れない、小利口な人間が増えた。理念よりも「口達者で金儲けの巧い」者がトップに座る傾向が強い。理念は、達者な口での建前となり、内では改革という名の下に消費者を忘れた「何が何でも利益、利益」という「我利我利亡者」経営者を誕生させた。長い伝統の中のほんの一瞬の「欲」に眩んだ結果が「名門」の悲劇を招いたのである。
北海道のミートホープ社は経営者が悪過ぎたが、従業員は「悪いことは分かっていたが、告発して職を失うのが怖かった」と発言している。告発すれば解雇される、解雇されれば「働く職場がなく、生活出来なくなる」という社会的貧困もあるかも知れない。しかし、不正がバレた途端、工場は操業停止になり、会社は倒産した。結局は職場を失ってしまったという現実を思えば、自分たちがもっと早く「改善すべきだった」と反省している人も多いのではないだろうか。
不正が食品会社に目立つが、食品会社というのは、会社の利益は増えても役員や株主に持って行かれ、従業員の給料や賞与は増えない、という例が多いようである。また、正社員が少なくパートやアルバイト等の非正規雇用社員が多いために労働組合の結成率も低く、労働条件も良い方とは言えないようである。このような中で、労働問題や経営者との感情的問題で会社を辞めた者が内部告発して不正が明らかになったケースが多い。消費者から見れば「有難い」ことだが、何十年も不正が行なわれていたことを知った時は、むしろ複雑な気持ちになる。
このような不正が起こらないようにするには、個々の弱い従業員を「もの言う」従業員に変え、生産現場の中に監視機能を持たせるしかない。そうして、企業が進路を過(あやま)たないよう目を光らせることが、結局は従業員の生活を守ることになる。最近は労働組合に加入しない若者が増えているが、そういう意味では監視役としての労働組合の存在は大きい、と言える。
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