以久遠氏 Beauty,Business & Favorites  profile   VOL-08/1999.4.15

以久遠氏骨董屋

 以久遠氏は骨董品や古道具が好きである。古都や城下町を訪れると、自然に眼が骨董屋さんをきょろきょろ探し始める。そして、骨董屋を見つけると自然と足が向く。東京、盛岡、仙台、鎌倉、水戸、京都、奈良、名古屋、赤穂、姫路、倉敷、金沢・・・等々、大抵が古都か城下町である。名のある名品は高過ぎて手が出ないので見物するしかないが、1〜2万円程度の小遣い銭で買える物は時折り買って来る。

 京都に単身赴任していたときは、休日毎に骨董屋さんを探し歩いては見物していた。さすがに京都は1200年の歴史を有する街だけあって、街中、到るところに骨董屋さんがある。間口が一間くらいしかない露店のような店から吃驚するような豪華豪壮な構えの店まで、ピンからキリまである。中には、単なる古道具屋なのか骨董屋なのか、区別のつかない店もある。

 大体、骨董屋さんの店内は狭くて乱雑である。陶器、掛け軸、生活雑器、西洋骨董など旧家の蔵の中から出て来たような品物が、所狭しと床の上に雑然と足の踏み場もないように並べられている。綺麗に整然と整理されているよりも、むしろ乱雑な方が骨董品のように見えるのかもしれない。雑然と並べられていても、中には数十万円もするようなものもあるので、蹴飛ばさないように足元を確かめながら恐る恐る見て回らなければならない。骨董屋見物は楽しいが結構時間もかかり神経も疲れる。

 特に、知恩院門前の、通称「骨董通り」には骨董屋さんが10軒ばかり軒を連ねるようにして並んでいるが、ここの骨董屋さんは店内が乱雑なところが多い。それだけ商品が多いのだから仕方ないが、全部の店を見て廻るとぐったりする。店の規模は中程度であるが、仏像もあれば茶碗や軸物の類まで品数が非常に多い。いわゆる、知恩院前骨董街である。生活雑器の類を扱っている古道具屋さんのような骨董屋から美術工芸品を飾っている骨董屋までいろいろな店がある。

 四条河原町の角には、とても骨董屋には見えない近代的で華美な店構えの大店がある。ショーウィンドーの中に飾ってある骨董品には、安くて数十万円、高いものは数百万円の値札が付いている。しかも、新品みたいな物ばかりで、歴史の香りもかって所持していた人の生活感が全く伝わって来ないものも多い。本当に、骨董品なのだろうか?こんな高価なものには値札が付いていないことの方が多い筈だが、値札が付いているのは外国人観光客相手の店の所為だろうか?ふと、そんな思いが走った。

 散策の途中、短パンにアロハという格好で、その店にぶらりと入ったことがある。ところが、「いらっしゃいませ」の挨拶もなければ、誰一人、応対に出て来ない。私には値段が高過ぎて真贋の見分けも付かなかったが、聞こうにも聞けず、全く無視されてしまった。一見(いちげん)のお客は相手にしないのだろうか?それとも、短パンにアロハという服装がいけなかったのか? お陰で、誰にも邪魔されずにゆっくりと見物出来たのは幸いだったが…。

 東京の虎ノ門界隈や鎌倉の若宮大路にも外国人観光客を対象にした骨董屋さんは数軒あるが、こんな感じの悪い店は見たことがない。どんな風体であっても、同好のよしみといった気安さで、店の主人や店員さんが応対してくれ、気さくにいろんなことを教えて呉れる。その点、知恩院門前の骨董街は応対もよく、何となく親しみが持て安心できる。 やはり、骨董品は人も物も語り掛けてくるような歴史の香りと人間味が欲しい。 汚れて古ぼけている中に琴線に響くものがあるのである。

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