∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 以久遠氏の Beauty,Business & Favorites 巻頭 <129号>VOL. '0909/ 2009.09.01号 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 驕る自民、偏に風の前の塵の如し
8月30日、「政権交代」を争った総選挙の投票結果は、大物政治家や現職・前職大臣などが民主党の新人に負けて落選するなど、多くのマスコミや国民が想像した以上の怒涛の政変だった。政権与党である自民党は303→119、公明党は31→21、与党合計では334→140と一瞬にして議席を半減以下に落とし、政党としての存在価値さえも問われかねないような無様な結果となった。
この原因は、自公政権の国民を侮った驕りにあったと言えよう。国会で真摯に議論を尽くして正邪を究めることなく、事ある度に「3分の2」特権を振り回し、数を力にして強行に押し切って来た自公政治のあり方にある。更に、原爆投下容認発言、産む機械発言、ヘベレケ朦朧会見、…等々、これを驕慢と言わずして何と言うか?源氏に滅ぼされた平家を謡い戒めた平家物語の冒頭の詩が浮かぶ。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり、娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。奢れる者久しからず、只春の夜の夢の如し。猛き 者も終には滅びぬ、偏(ひとえ)に風の前の塵に同じ。遠く異朝を問らへば、秦の趙高、漢の王莽、梁周伊、唐の禄山、是等は皆旧主先皇の 政事に従わず、楽しみを極め、諫めを思い入れず、天下の乱れん事を悟らずして、民の愁うる所を知らずんば、久からず滅びし者共 也。
正に正論で、今日の自民の姿を驚くほど見事に言い得て妙である。特に後段の「諫めを不思入、天下の乱れん事を不悟して、民間の所愁を不知しかば、不久して滅びる」という部分は、そのまま戒めとして民主党にも物申したい。
羊のように温和しい国民を怒らせた挙句の果てに国民から「NO!」と突き付けられたのが今回の選挙である。国民が虎か獅子のような肉食系気質であれば、如何に傲慢な自民党と雖も、間違っても尻尾を踏まないよう気を配っただろうと思われるが、山羊か羊のような草食系気質と見くびっていたのだろう。投票率が70%にも満たないにも拘わらず、前回よりも僅か数%高いだけで、55年もの長い間圧倒的数を背景に君臨し続けた第一党自民党が、一日にして184もの議席を失った今回の総選挙はわが国の近代政治史に大書されるだろう。
一方の第一党となった民主党は112→308と、突如196もの議席が増えた。落選184人の自民と落選10人の公明の二党を合わせた分以上に増えたのである。この民主党の躍進の陰には、かって強大派閥田中派の若頭として田中派を取り仕切り、一方では自民党幹事長として他の派閥に睨みを利かした小沢一郎氏の存在と采配は無視できない。
ここ数年、あちこちで突風や竜巻が吹き荒れた。政界でも後期高齢者医療制度や年金や格差や雇用の嵐が吹き荒れ、大きな風となった。その種を日本国中に撒き散らしたのは他ならぬ小泉政権以降の自公政権の失政である。風を吹かせることは難しいが、一度吹き始めた風を大団扇で更に煽ることは難しくない。起きた風に乗ることの方が遥かに難しい。
民主党が政権奪取した今、民主党にとって最も必要なものは党の結束であるが、元来、動物は群れると騒ぐもので、人間も然りである。集団が大きくなればなるほど、その中にまた集団が出来る。これは自然の成り行きだが、殊更口煩い政治家の集団であるだけに余計な摩擦も生じる。そして派閥化する。ただ、今の政治資金規正法下では昔のような強大な派閥が生まれるとは思えないが、いずれは民主党内にも多くの派閥めいたものが生まれることは間違いない。
民主党の中には党歴が小沢氏よりも古参のものも多く、今回の選挙の大勝の因を民主への風、地殻変動と捉え、小沢一郎氏の功績を過小に評価しようとする者もいるようだが、公明党幹部の落選、大臣クラスの落選を見ても、派閥の力学を知り尽くし「数は力なり」の名言を残した小沢一郎氏の選挙戦略と采配が大きく寄与していることは否定できない。またこれが彼の誇りでもある。「一票一揆」と評する向きもあるが、有権者の4分の3くらいの人たちが投票に行っておれば一揆と称しても良いだろう。
69%台ではやはり「風」である。風というものは呼吸のようなものでいつまでも吹き続けることもないし、順風も一寸したことで一瞬にして逆風に変わる。民主党内に、脛に傷を持つ問題議員や砂糖に群れるたがる族議員も大勢いるだけに、党員の身辺管理を疎かには出来ない。放って置けば、民主党主体の新しい利権が発生し、新しい族議員が生まれ、由々しき事態が起こりかねない。
更なる問題点は「壊し屋」小沢一郎氏の豪腕である。豪腕が外に向いている間はよいが、民主党内部に事が起き、その豪腕が内に向かったときは大事態が起こるだろう。政権を漸く手に入れた今、派閥の良い点も悪い点も知り尽くし数の論理も知り尽くしている彼自身が、自らそんな事態を引き起こすとは到底考えられないが、小沢氏の力は常に「数」にあるだけに、小沢チルドレンの数を見ると予断を許さない状況にもあると言えそうだ。
いよいよ民主党も大企業になった。中堅企業が大企業になった途端、往々にして内部抗争が起こり会社がおかしくなる例は多い。中堅企業が大企業へ飛躍する過程においては、それなりの経営資質と経営能力のある人材が求められるが、民主党にそのような大企業経営の適格者がいるのだろうか、気懸かりである。鳩山家の家内企業であった民主党が日本の民主党としてどのように育つか、注意深く見て行きたい。
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