以久遠氏 Beauty,Business & Favorites     ビジネス座談@   VOL-10/1999.5.15

   PR  

 商品を売るには、仕掛けや仕組みがいる。商品が如何に素晴らしかろうとも、それだけでは必ずしも売れるとは限らない。売れるということは売るということではない、消費者が買うということである。買うということは、消費者に購買欲求と購買行動を起こさせなければならないということである。購買欲求を起こさせるには、消費者に商品の素晴らしさを知らしめなければならない。当たり前のことだが、商品を知らない消費者に購買欲求は絶対に生じない。

 カタログもPRの一環と言えないこともないが、カタログは大抵、商品自身の機能、性能、仕様、品質を記述するだけで精一杯である。事細かに、他社の競合品との違いまで記載することは物理的に不可能である。これはPRの一機能を満足しているに過ぎなく、良いPRとは、消費者は何を知りたがってるのかという点に答えられるものでなければならない。となると、カタログ以外に他の方法手立てを実行しなければならない。一般的にはPRということになる。

 口コミというのは、購買行動を起こさせる最も効果的なPR方法である。しかし、短期間のうちに大量に売れることは期待し難いので、何らかの手段で口コミと同じ効果を引き起こさせることを考えなければならないことになる。口コミの優れている点は、

  1.商品を推奨する人が実際に使用しているか、あるいは身近に使用している人がいて、商品の良さを熟知している。

  2.利害の外にいるので、信頼される。

  3.他社の競合品との差別化を事細かく熱っぽく語って呉れる。

  4.機種を決め兼ねて迷っている人に対し、決断者的立場に立てる。

ということが考えられる。また、商品が売れるためには、商品自身も条件を満たしている必要がある。

  1.時代のニーズにマッチしていること。

  2.商品の良さが消費者に十分に認識されていること。

  3.価格が購買者の懐具合にマッチしていること。

  4.機能、品質、性能等において商品自身が完成されていること。

の四つの条件を満足していることが必要である。如何に商品の品質や機能が優れていても、時代の要求にかけ離れていれば、時期尚早の商品となる。また、顧客の購買力を超えた価格の商品は、顧客は指をくわえて物欲しげに見ているだけになる。

 PRという面では、一般的には、中小企業よりも資金力と人材に優る大企業の方が一枚上である。大企業は、販売戦略的にも、PR戦略的にも大きな資金が投下できるという点では中小企業よりも優位に立てると言える。しかし、インターネット時代においては、必ずしも企業の規模と資金力は絶対的な有利性とはならない。

 例えば、インターネットは、PRの対象としては1:無数という点でカタログに似ているように見えるが、双方向の意思疎通ができるという点において1:1というホットな関係にある。しかも、印刷代も郵送料もかからないし、時差も大きな問題にはならない。必要なら、取扱説明書も販売促進資料もインターネット上に載せることも考えられる。商品によっては、インターネット上でモニターすることも出来る。

 マスメディア社会においては、通信宣伝、通信広報の仕方によって消費者に対しかなり専門的な内容までを広報できる。これを利用しない手はないのである。しかも、驚くほどの低コストで、短時間のうちに全世界に発信できる。従って、知名度の低い企業のPR戦略は、消費者に出来るだけ詳しく商品の仕様や機能、あるいは他社品との比較を知らしめるものでなくてはならない。消費者に商品の善し悪しの区別がつくくらいの知識を持たせるPRをしなければならない時代が到来しているのである。

 これまで、大企業の商品が売れたのは、豊富な資金力と高等なマーケッティング技術を駆使して、売る体制というか売れる仕組みを作り上げて来たからである。一般消費者に、大企業の商品は間違いがないという思想を巧妙に印象づけて来た。そのために、ただ大企業が作った商品というだけで、無条件に品質や機能が最高だと思い込んでいる消費者が大勢生まれた。言い換えれば、消費者の無知の上に大企業という幻の信用を、実に巧妙に消費者の意識の中に潜在的に根づかせたのである。


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