以久遠氏 Beauty,Business & Favorites       VOL-10 [1999.5.15号 毎月1日15日頃発行]

出来るもの出来ないもの    

 グローバルスタンダード世界標準という言葉が聞かれるようになって既に久しいが、ISOという世界生産方式基準の定着とインターネットの普及によって、この思想は実感として認識できるようになった。まるで、この両者は黒船の到来のようなものである。あらゆる規制を取り払い、有無を言わせず自由化を迫って来る。インターネットは文字文化の再来を予感させるが、世界の価値観の画一化を促進し、国家という垣根を取り払おうとしている。2001年には内外のあらゆる規制が取り払われる。21世紀は、完全な自由取引の時代になる筈である。

 先ず経済の分野から、国という障壁が取り払われることになる。世界が一つのマーケットに統合されて行くのである。そして近い将来、この規制撤廃を契機に、政経のあらゆる分野において世界は急激に一つに向かうことになるだろう。これは、世界に通じることが企業生存の条件となることを示唆しているのである。

 インターネットという電子化の波はこの流れに拍車をかけ、文化は西から東へ、高から低へ伝播する、という常識を一瞬のうちに過去のものとした。あらゆる情報は、世界中東西南北を一瞬のうちに駆け巡って、法律や商慣行のみならず一般市民の価値観までも画一化を推し進めるのである。

 この電子化の波は、社会構造から一般市民の生活や環境まで、急速な変化をもたらすだろう。超変革の時代が直ぐそこまで来ているのである。価値観が変革する時代は、哲学の時代が到来したことをも意味する。鎖国経済を礎とした幕藩体制が崩壊し、一夜にして近代国家に生まれ変わった明治時代に見られるように、思想と哲学が実生活に大きく影響する時代が目の前に来ているのである。

 変化という大河は豊穣な土壌を育む代わりに、大切な資源をも流し去ってしまう。変化の時代なればこそ、表題に掲げた出来るものと出来ないものの見極めが大事となる。出来るものと出来ないものは、すべきものと、してはいけないものという言葉に言い換えてもよい。あるいは、残すもの」、「捨てるもの」、「失うもの」、「変化するもの…、ありとあらゆる言葉を当てはめてもよい。

 よく似た言葉に不易流行(ふえきりゅうこう)という言葉がある。いつの世にあっても変わってはならないものと世の中の変化に応じて変わらなければならないものという意味であるが、変化の激しい時代なればこそ、変化に惑わされ、何を変え何を維持して行くかという価値の原点を見極めることが重要である。

 文明は変化を遂げつつ際限なく発達するが、中国の箴言(しんげん)が今もなお尊ばれているように、人の心だけはいつの世にあっても変わらない。喜怒哀楽、怨嗟僻羨の感情だけはいつの世にあっても不変なのである。人間も企業も政治も、時代が要求する変化に確固たる哲学を持って柔軟に対応できたものだけが生き残れる。いつ、如何なることに遭遇しても、常に原点を見失わないようにしなければならない。

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