以久遠氏 Beauty,Business & Favorites    ビジネスA   VOL-11/1999.7.1

信用取引とは期間利益授与契約  

 資本主義自由主義経済は、基本的には信用取引をベースとして成り立っている 取引には、代理店販売に代表されるルートセールスのような継続取引と、一回ぽっきりのスポット取引の二つがある。いずれの場合も、売り手は買い手に対し締め日を決めて、一定期日に代金決済をしているのが普通である。この決済方法が、相手に何らかの「期間の利益」を与えることになる。

 では、「期間の利益」はどのような条件の下で与えるのか、そしてそれによって、買い手と売り手の双方はどのような義務を負うのだろうか。この二点が、取引条件の中で最も重要な部分である。従って、これらの取引条件を文書化したものが「売買契約書」と言われるものである。

 「期間の利益」とは、売り手側が買い手に与えた一定期間の「信用」という利益の供与である。買い手側から言えばその信用供与の期間は、支払いを猶予されているという意味で「利益」を享受していることになる。ということは、買い手よりも売り手の方がリスクを負っているということになる。従って、売り手は、「期間の利益」は限られた条件の下でしか買い手には与えてはいけないということになる。従って、売買契約書には、相手が約束を破った場合の罰則として必ず「期間の利益喪失約款」という形の付与条件が明記される。

 付与条件とは、一般的には「買い手側の信用状態に悪化現象が現れた場合は、期間の利益を喪失する」とか「本契約に違反した場合に期間の利益を喪失する」といった内容で、殆どの売買契約書や継続取引基本契約書に「期間の利益喪失約款」条項としてうたわれる。突然の事態に備えて、将来のトラブルを避ける意味からも、売り手側が債権者として権利行使をする時のためにも、必ず契約書に成文化しておく必要があるものである。

 取引が継続的して続く場合には、一定の取引期間を定めて「期間の利益」約款等の基本的な事項を文書にした「継続取引基本契約書」を交わすことが通例である。この継続取引基本契約書を取り交わすメリットは、双方が個々の取引毎に取引条件を決める煩わしさから開放されること、取引の度毎に売買契約書を作成する手間が省けることなどが上げられる。そして、買い手側には、商品が安定して供給されるという点が上げられる。ついでに言えば、この場合、煩雑さを避ける意味から、個々の取引については「発注書」と「請け書」の交付をもって行われるのが通例である。

 さらに、個別の売買契約書にもうたってあるが、買い手の経営状態に異常が起こった時、契約書の中の「期間の利益の喪失条項」や「所有権留保条項」等の定めに基づいて、取引条件を遡って破棄したり、一方的に有利に変更したり、商品を合法的に引き上げたりすることが出来るという利点がある。売り手は、この基本契約書や売買契約書によって債権の回収や保全がし易くなる訳である。

 一般的に、継続取引基本契約は、売り手側に有利であるように思われているが、決してそうではない。買い手側にも、大きな利点がある。買い手にとって、基本契約を締結しない取引がどのようなところが得でないかは、例えば、次のような点が挙げられる。

 @ 取引与信限度額が低く設定され、必要な時に必要なだけの商品が仕 入れられないので、商売の規模が大きくなりにくい。

 A 取引与信限度額を超えると、手形取引が出来なくなり、現金取引となったり、商品が納入 ストップされたりして不安定である。

 B 長期安定販売先として見て貰えないため、価格面での優遇や量の保証が得られず、結果と して高いものを買うことになる。

 C スポット取引先として取り扱われ、いざという時に支援も得られず、諸々の優遇施策のメ リットも受けられない。

 D 商品が稀少になった時、継続取引基本契約を締結している方に供給責任が発生するために 稀少商品を仕入れられないことがある。


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