
組織は、構成員が相互に有機的かつ機能的に活動でき、しかも効率よく成果をあげることを目的として作られるべきものである。決して機能があるからといって、軽軽しく組織を作らない方がよい。「始めに組織ありき」ではなく、原則的には「人あり、然る後、組織あり」という考え方でなくてはならない。従って、組織の構築は、管理者の能力に応じて行わなければならない。
日産コンチェルンの創始者である鮎川義介は、「社長を務まる人材が育ったら、部門を独立さて新会社を設立する」という方針であったそうである。その結果、あらゆる分野に優秀な企業が生まれ、成長して大企業となり現在まで続いている。新しく組織を作りたいと思っても、その組織を統括する適材者がいないときは作るべきではないのである。
管理者の最大の任務は、部下に対して時機を過(あやま)たず、的確に、しかも分かりやすく指示命令することにある。その指示命令が末端まで到達することが大事で、部下の人数も多過ぎず少な過ぎず、管理者の能力に合わせなければならない。最も管理しやすく、しかも効果が発揮できる人数を配置しなければならない。
普通よりちょっと優秀な管理者でも、管理できる人数は5〜6人が限度と言われている。仮に、その5人に5人の部下をつければ25人となる訳で、間接的にしろ25人の日常の活動状況をつぶさに見るのは並大抵の管理ではない。中には10人くらいの部下を管理できる管理者もいるかもしれないが、そんな優秀な人ばかりではない。テキパキと手際良く指示できる管理者はむしろ少なく、なかなか決断出来ずに逡巡してばかりいる管理者や他人に意見を聞いてからしか決断できない管理者の方が遥かに多いのが実状である。こんな管理者では処理案件が滞留して業務に支障を来すことは目に見えている。従って、とても大勢の部下をもたせる訳にはいかない。
管理可能な部署の数も同じである。緻密な経営を行いたければ、一人の部門長に任される部署の数は、せいぜい3部門程度に抑えた方がよい。4部門以上を統括的に見れる人は相当に優秀な人である。目を凝らして一点を見つめると、周りがぼやけて見えなくなるように、仕事も一つの業務や一つの部署に根を詰め、埋没すればするほど全体の動きが見えなくなる。ということは、組織を作るときは人数は5人以下、部署は3課以下というような基準を設けておいた方が無難ということになる。その通りで、部長には3課を見させ、課長には2〜3の係を見させるくらいが丁度よいのである。
企業が成長しているときは、どうしても人員が増える。人が増えれば、ごく自然に部門も増える。このような状況のときは、肥大化組織になりがちなので気を付けなければならないが、もっと大事なことは「管理可能な数の原則」を忘れないことである。そうすれば、必然的に係が増え課が増える、課が増えれば部が増える、部が増えれば事業本部を設けなくてはならない、ということになる。一見、外見的には、組織の肥大化現象のように見えるが、案ずることはない。これは組織が健全な発展を遂げているために起こる現象であって、いわゆる経営的に問題視されるような組織の肥大化ではない。
逆に、係や課を増やしたくない、あるいは管理職を増やしたくない、といった理由だけで構成人数を増やすことの方が、むしろ隅々まで目が行き届かなくなって、組織の肥大化現象を起こすことを知らなければならない。