我が国でマーケッティング(Marketting)という言葉がビジネスの中で市民権を得たのは昭和50年代に入ってからである。従って、まだ20年そこそこの歴史しかない。わが国においてはまだまだ揺籃期であると言える。もともとマーケッティングという経営手法はアメリカから入って来たが、マーケッティングと切っても切れないターゲットという言葉も同時に入って来た。
当時、このマーケットという「市場」を意味する英語にING が付いたマーケッティングという言葉が、何を意味するのかを正確に理解できていた人は殆どいなかったと思う。それくらい、わが国のマーケッティングは遅れていた。それまで、我が国にはマーケットリサーチという言葉くらいしかなかったのである。
マーケッティングとは、メーカーや販売者がマーケット(市場)に対して、具体的に、意思的に、そして能動的に働きかけて消費者の購買行動を掴み、あるいは消費者に購買動機を起こさせ、それを基にして商品を企画し、消費者の購買力と購買行動を自分の方に有利に向かわせようとする社会学的な経営学である。即ち、「市場から発想する」経営手法ということになる。特に、マーケッティングは商品開発において重要な意味を持つ。マーケットニーズは既に顕在化しているものもあるし、消費者の意識の底深くに眠っていて全くマーケットを形成していないものもある。
顕在化しているものは、仕様や機能などの改良によって既存の市場に登場するが、意識下に漠然とあるものは、メーカー主導あるいは販売者主導によって商品が開発される。そして、それによってニーズが掘り起こされ、購買動機を育んで新しいマーケットが形成されていく。これが、マーケッティングの持っているマーケットクリエーション( Market Creation )機能である。
今風に言えば、マーケットイン( Market-in )思想という言葉に集約されるが、消費者が求めているものは何か、消費者は如何なる条件下において購買行動をとるのか、消費者の購入心理を如何にして捉えるか、消費者の購買行動と社会の成熟度とは如何なる関係にあるか、などといったことを購買者と販売者の両面から分析し、将来を予測する学問であると言ってもよい。いわば、購買心理学、営業心理学、消費社会学、行動科学に社会科学的な力学をミックスしたようなものと思えばよい。
従って、マーケッティングを担当する者は、幅広くあらゆる分野にわたって勉強しておかなければならない、ということになる。勿論、市場における流通価格や末端消費者価格、流通経路や流通マージン、競争相手や競争商品、取引慣行、市場ニーズ又はウォンツなどの実情を詳細に把握していなければならないのは当然のことである。当たり前であるが、これらを熟知しているマーケッターの予測や販売戦略は極めて正確である。