以久遠氏の Beauty,Business & Favorites      ビジネス談義-3-    VOL.13 /1999.12.01

インターネット社会で何が変わるか? 

 世は、まさにインターネット時代に突入した感がある。1995年、Windows 95が上陸し、やっと扉を開けて入り口の辺りをうろうろしていると思っていたら、4年足らずの1999年には、1000万人以上の人々がインターネットを利用するまでになっている。殆どの情報やコミュニケーションをインターネットを通じて行なったり得たりしているのである。短期間の間に、これほど普及し、社会構造や人間の意識を変化させたものはないだろう。21 世紀には、世界は完全なインターネット社会となっているだろう。

 古来、人間の欲望と発想が時代変革のエネルギー源であった。通信の概念を根幹から崩壊させたインターネットの登場は、世界中の不特定多数の人たちとの自由なコミュニケーションを可能にし、しかも同一時間帯、複数地域での意思疎通をも可能ならしめた点で想像以上に画期的なものである。

 これまでは地球の裏側とのコミュニケーションは大変であった。一方が仕事に精を出していても、一方は仕事を終えて会社にはいない。あるいは深夜で就寝中である。なかなかコミュニケーションが上手く行かなかったが、インターネットはこの問題点を大幅に解決して呉れた。声と文字と写真ばかりでなく、ソフトさえもが一瞬のうちに共有化出来る。情報伝達と情報交換に要する時間と手段が著しく簡便化されたことは、むしろ脅威とさえ言える。

 と言うことは、ビジネス面から捉えれば、インターネットは販売者と消費者の思考体系と行動面に大きな変革を起こさせるのではなかろうか。想像を超えた巨大な変革パワーを生み出すだろうということが容易に予測できる。この数年の内に、マーケット・販売形態・広告宣伝・商品価値・流通形態・物流などの面に急激な変化が起こる可能性が大きいということである。

 これまでは、情報の相互伝達スピードの制約を受けるがために、マーケットに地域性を発生させていた。限られた狭いエリア、いわゆる「商圏」というものである。商圏が存在し、その商圏を守る代理店を設置していたために、必ずしも高額な費用を掛けて情報を得る必要性がなかった。しかも、情報はそれほどスピードを要求するものでもなかった。そのような社会条件が、一面では代理店販売という流通形態を生み出したという見方も出来る。

 しかし、情報の伝達スピードが速くなり、人々もそれを要求するようになると、マーケットに地域性がなくなってくる。現代は、まさにボーダーレスマーケットへ変化している最中である。国内のみならず海外の情報が、片田舎のビジネスを左右する可能性が大きくなって来ているのである。会社や事務所も、必ずしも東京や大阪などの大都市に置く必要性がなくなりつつあるのである。

 殊に、モバイルコンピューターやデジタルカメラや携帯端末などの情報メディアの発達は、いつ、どこにいても、目と口と耳で瞬時のうちに情報の交換を可能ならしめる。はるばる遠方地まで出張する必要がなくなるのである。例えば、モバイルコンピューターとデジタルカメラと携帯電話さえあれば、インターネットを利用することで、実際の現場で稼働している機械の状況を目と耳とで把握することが出来るのである。

 このように情報の送り方や受け取り方が変われば、必然的に発信者と受信者との関係は、自ずと形が変わる筈である。では、どのように変わるのだろうか。

1. マーケットが変わる

 これまで日本の国内マーケットは大きく別けると、関東圏、中京圏、近畿圏、九州圏、東北圏、北陸圏、北海道圏の7ブロックに分かれていたが、インターネット社会では近い将来日本という一つの商圏に統合されて行くだろう。同じことは、地球全体についても言える。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東などに分かれて独立して存在していたマーケットは、地球というマーケットに統合されることになるだろう。ということは、商品の価格や金利などは地球上全て同一となり、異なるのは運送費だけということになる。

2. 店舗が変わる

 いわゆるバーチャルショップが出現するだろう。まるで六本木にあるような洒落たブティックが、所在地を調べて見れば地方の小さな町にあった、なんてことが日常的になるのである。錯覚ショップとか、疑似触覚対面ショップとでも言った方がピッタリする通信ネットワーク上の仮想店舗である。在庫費用も照明や棚設備も掃除も不要の、まさしく店舗コスト不要の店舗が出現するのである。顧客は、コンピュータに向かい合っての対面販売という訳である。

3. 商流が変わる

 これまでは集団massの時代であったが、これからの高度情報通信ネットワーク時代は個piece ; individual;personalの時代と言える。例えば、これまで、ファックスは事務所へ送ることで、社員に回覧されて情報の伝達が行なわれて来た。個々人に伝達されるまでに相当な時間を要していたが、インターネットにおいては個人宛に直接伝達される。しかも、相互にコミュニケーションが図れるのである。

 また、これまでは、地方のユーザーに対して、商品の説明やデモを行なうために代理店を設置せざるを得ないという面があったが、インターネットを利用することによって双方向の疑似対面販売が可能になった。顔が見たければ営業マンの顔写真を送り、自己紹介の簡単な経歴をクリップして双方向通信をすればよい訳である。小型小売点や営業マンが不要の時代が到来するかもしれない。

4. 物流が変わる

 部流コスト4%以下(日本では大半が5%を切れなかった)を達成し、驚異的な低価格体系を実現したアメリカの航空貨物会社、FEDEXに代表されるように、極めて近い将来、日本にも国際宅配便の時代が到来する。恐らく、アメリカ日本間が2日という超スピードの時代になるだろう。

 そうなるために、先ず巨大集配センターを頂点として中小の集配センターのピラミッド組織が出来るだろう。その陰で、小型小売店は激減し、ルートセールス体系が壊れ、流通体系の短絡化が促進される。ひょっとしたら運送会社が小売店業務を代行することになるやもしれぬ。流通機構の変革が進行する。

5. 広報や宣伝が変わる

 高度な機能を有するパソコンが極めて低価格になり、カラー写真並の印刷が出来るようになった。デジタル信号で情報を送れば、ユーザー自身が自分のコンピューターを使って印刷する訳である。ということは、カタログや商品説明書等の印刷物を大量に印刷する必要は無くなるということである。しかも、双方向通信によってお互いの意思の疎通が図られる訳で、これは印刷業界の構造変革を促すだろう。

6. 商品の価値が変わる

 世界中の商品が一覧的に比較できるようになる。それによって、地域や国によって価格差があった商品の価格が一本化する。価格体系の国際化が進行する訳である。そうなれば必然的に、あらゆる商品に国際相場が形成されるようになる。こうして、国際競争が起こることになるが、並行してサービスというソフト商品の価値が高まり、ハードとソフトの競争に勝利した商品とメーカーだけが生き残ることになる。

7. 消費者の購買行動が変わる

 英和、日独、日仏等の翻訳ソフトの充実化によって、老若男女、インテリ・ノンインテリとを問わず、誰でもが世界中のメーカーから商品を購入することが出来る。消費者にとって商品の選択肢が増えることになる。

8. ブランドの時代となる

 商品の国際化はそのままブランド化の進行を意味する。高級品と低級品、高価格品と廉価品の二極化が進む。粗悪品と良品の選別がネット上で行なわれるようになる。その結果、粗悪品は消滅し、良品がヒットする時代が来るだろう。良品の時代は、またダイレクトマーケッティング時代の到来をも意味する。

9. 営業の形が変わる

 提案(プレゼンテーション) から見積もり、受注まで がリアルタイムで出来るようになる。現物を持ち込んだり、逆に招待したりして行なうデモの代わりに、動画(mpeg ビデオ) によるデモが主流になる。バーチャルリアリティーの世界になるのである。

10. 組織が変わる

 これまでは、時間と距離とスピードという物理的な条件があったがために、ピラミッド型の、集団管理型の組織が必要であった。しかし、インターネットは時間と距離とスピードの概念を払拭し、一台のパソコンが、多数の人達の一元的管理を可能にした。

 これまでの組織論では、集団から個に落として管理することが常識であったが、これからの個の時代は、個の管理をベースに組織を最小限なものにするだろう。従って、東京本部とか大阪支部といったエリア的な思考は不要となる。これは、戦略と戦術の境界が無くなることをも意味する。個の時代を迎え、次代を担う人達を如何に教育するか、ということが最も重要な課題となるだろう。


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