以久遠氏の Beauty,Business & Favorites    VOL.17 2000.04.01号 [ 毎月1日更新 since 1998.12.15]

自我作古   

 標題は「我より古(いにしえ)を作(な)す」と読む。「我が行く前に跡無く、我が後ろに跡あり」と同じ意味である。それにしても、たった四文字しかない「自我作古」という言葉の持つ奥の深さと響きの何と清しく素晴らしいことか。現代にあっても色褪せぬ鮮烈な道標(みちしるべ)である。

 21世紀を前に、世界の価値観が奔流の如く目まぐるしく激変している。新しい時代が始まるということは、新しい価値観の歴史が始まることを意味する。新しい価値観、即ちオリジナリティーの時代が直ぐそこまで来ているのである。人と同じことを考え、人と同じことをしていたのでは人を超えることは出来ない。

 エクスプローラー(探検家)魂とパイオニア(開発者)魂とチャレンジャー(挑戦者)魂の根源は全てオリジナリティーにある。オリジナリティーが人間としての尊厳と存在感の泉源であることを改めて思い起こさなければならない時代を迎えようとしているのである。

 企業も同じである。企業は他の企業を超えるために自らあらゆる古い価値観の鎧を脱ぎ捨て、国家という概念を超越し、新しい衣と自らの新しい生存場所を模索している。

 標題は、「人の真似をするな。自らが元祖となるようことをせよ。即ち、生きているからには後世に何かを残すような生き方をせよ」という意味である。14世紀の中国、宋時代に書かれた膨大な歴史を記録した書「宋史」の中に出て来る箴言(しんげん)であるが、「自我作古」と同じ意味の箴言には「人生、須(すべか)らく痕(あと)あるべし」というのもある。どちらも慶応義塾の創始者福沢諭吉翁が若き塾生に好んで熱く語りかけた言葉である。

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