以久遠氏の Beauty,Business & Favorites    Hawaii 紀行 - その二 -   VOL.17 / 2000.04.01号

キラウエア火山  火の女神ペレの島

Big Island,Hawaii

'Hawaiian Sunset fromo Kona Coast ' Photo By Mr.Inohiza

 ハワイ諸島は、一般的にはカウアイ、オアフ、モロカイ、マウイ、ハワイの5島がハワイ諸島と呼ばれているが、地図で見ると、左上からニイハウniihau島、カウアイkauai島、オアフoahu島、ラナイlanai島、カホオラべkahoolawe島、モロカイmolokai島、マウイmaui島、ハワイhawaii島の8島から出来ている。これらの島は北方から東南に向かって島が誕生した順にきれいに一列に並んでいる。一番北方のニイハウ島が長男で、南のハワイ島が末っ子ということになる。

 そして、ハワイ列島は南に行くに従って、即ち島が若いほど段々大きくなる。何故、そうなるかは、ハワイ列島の岩盤が北へ動きながら沈んでいることがプレートテクトニクス理論によって解明された。ハワイ島の南部キラウエア海岸の海底にはホットスポット(海底火山の噴火口)があり、そこでは今も年に10数センチの新しい陸地が生まれており激しく噴煙がたなびいている。ハワイ島は今も成長している島なのである。従って、最も新しく生まれたハワイ島が最も大きく、愛称もそのものずばりビッグアイランドと名付けられている。

 ハワイ島は北海道から札幌千歳の線より西を切り取ったような菱型をしている。宗谷岬に当たるところがハヴィhawi 町、網走がヒロhilo市、帯広がプナルウpunaluu町、千歳と札幌がハワイ島最大のリゾート地コナ・カハラ・コーストkona kahala coastとカイルア・コナkailua konaあたりになろうか。ハワイの地名は付記した現地語を見ても分かるように、殆どローマ字読みで読めるので分かり易い。

 さすがに観光で持っている州である。ディズニーランドのように、それぞれの島には魅惑的な愛称が付けられている。シダの洞窟で有名なカウアイ島は「ガーデンアイランドgarden island(庭の島)、風光明媚のマウイ島はマジックアイランドmagic island(魔法の島)とかバレーアイランドvalley island(谷の島)、蘭の花が咲き乱れる最大のハワイ島はビッグアイランドbig islandとかオーキッドアイランドorchid island(蘭の島)と呼ばれている。

 最近は、ラナイ島を「静寂の島」、モロカイ島を「友情の島」、オアフ島を「集いの島」、カホオラベ島を「禁断の島」、ニイハウ島を「秘密の島」とも呼ぶらしい。親しい人をニックネームで呼ぶように、不思議なもので、海に浮かぶように霞んで見えている小さな島が愛称があるというだけで親しみが湧いて来る。何となく、一度は行ってみたくなる衝動を掻きたてる媚惑的なネーミングである。さすがはエンターテインメントの国アメリカである。

 ハワイ島の広さは四国のほぼ60%、一周すると320kmもある。南部は11号線、北部は19号線が全島をほぼ周回しているので一周できる。島を横断するには、南北に長大に延びる標高4000mを超えるマウナロア山とマウナケア山によって二分されているので、マウナケア山とマウナロア山との間の中央部の溶岩台地を分断して東西に走っている200号線を走るしかない。どちらも分かり易い一本道である。

 南部のキラウエア火口が最大の観光地で、火口の周辺には四方八方に千路(ちじ)に観光道路が設営されている。その合計距離は240kmにも及ぶそうだ。とても一日や二日で見物できるような島ではない。じっくり観光しようとすれば、一週間くらいはかかるだろう。無理してでも短期日のうちに見ようと思えば、早朝にカハラ・コーストのヒルトン・ワイコロア・ビレッジ・ホテルを出て暗くなってから戻るようなハードスケジュールを強いられる。

 さして大きくない島にもかかわらず、年間降雨量が地域によって150mm3800mmという格差があり、浜辺からキラウェア山頂までの高度差も4200mもあって、気温も平地と高地では24度以上の温度差がある。気候的には、砂漠から熱帯雨林まであり、着衣もアロハシャツからダウンジャケットまで用意しなければならない。海岸でマリンスポーツを楽しみ、その足で車を飛ばしてマウナケア山まで登ればスキーもできる。沿岸部は温暖な亜熱帯で爽やかに乾燥しており、夕方になるとアロハシャツ一枚では涼しいくらいの爽快で過ごしやすい島である。

 島の東側、ヒロの北部辺りは高温多湿のジャングル地帯で、南西部のサウス・コナ地区は緑はあるが砂漠のように乾燥しており、マウナケアやマウナロアの頂上付近は12月から5月まで積雪があってスキーが出来る。カイルア・コナ地区が温暖な気候のリゾート地で巨大で豪華なリゾートホテルが集まっている。

 我々は日程の関係から、コナから南下してサウスポイント、キラウエア、ヒロを経て、200号線で島を横断してコナに戻るという南半周コースを選んだ。ドライバー兼ガイドはケビンkevinという陽気な白人青年で、苗字は、コスナーか?と尋ねると、ニコニコ笑いながら日系人のように流暢な日本語で、そうだったらいいんだがねぇ。ユーモアも解する人なつっこい好青年であった。

 ケビンの案内で、コナの市外から海岸沿いの19号線を南へ走ると、ほどなく11号線に入る。ホテルで貰った観光案内によると、この辺りに「歌を歌うロバ」がいるらしい。コナの山間部に野生しているコナ・ナイチンゲールと呼ばれるロバは、群れをなして歌うのだそうだ。ハワイアンの歌でも歌うのだろうか?残念だが寄り道する時間がなく、ロバの歌を聞きに行くことは出来なかった。

 明るい太平洋を右に見ながら更に南下する。段々、風景が乾燥して来る。ガイドのケビンが海をよく見ていろと言う。時折り、鯨の汐吹きや、鯨一家の遊泳が見えることがあるらしい。太陽の陽射しを受けて穏やかにキラキラと輝く海を目を凝らして眺めていたが、鯨を見つけることは出来なかった。

 この辺りは雨の少ない地区で、コナコーヒーとマカデミアナッツの一大産地である。山側や海岸には世界一良質といわれるコナコーヒー園がそこいら中に見える。アメリカ合衆国の中でコーヒー園はハワイ州だけにしかないらしい。春になると、コナコーヒーの木に「コナの雪」と言われる白い可憐な花が一面を真っ白にして芳しく咲くのだそうである。広大なコーヒー園一帯に咲き乱れる光景は真っ白な雪原のようで絶景らしい。その白い可憐な花が、秋になるとさくらんぼのような赤い実を付け、コーヒーの実の収穫が始まる。

 ホナウナウhonaunauのコーヒー博物館で無料サービスのコナコーヒーを一服する。博物館と称しているが、商品棚には値札を付けた袋入りのコナコーヒーが並んでおり、お土産店といった感じの小さな木造二階建ての建物である。コーヒーを入れてくれた店員の女性も押し売りするようなところが全くないのは嬉しい。ハワイ諸島を発見したキャプテンクックが原住民に殺されたナポオポオnapoopooの村は直ぐ近くである。コーヒーテーブルのあるテラスから、彼方の海岸に微かだが、目を凝らすと一際目立つ白い石造りのクックの記念碑を遠望しながら、無料のコナコーヒーをのんびり心地よく味わうことが出来た。

 再び11号線を南下する。途端に人家が減り疎らになる。家々の庭先に大きな樽のような物が目に入る。飲料水用の木製のタンクである。この辺りは水道設備がなく、飲料水を確保するために雨水を貯めておかなければならないのだそうだ。溶岩地であるために水捌けがよすぎて地下水がなく、井戸が掘れないのである。

 島の最南端にサウスポイントsouth point、現地語でカラエkalaeと呼ばれている地区がある。マウナロア山の南端麓にあたり、なだらかに太平洋に迫り出すように海へ落ちている。突端にアメリカ合衆国の最南端でもあるカラエ岬がある。カラエ岬は草深い広大な草原で、ここへは11号線から一車線の狭いデコボコ道にそれて15分くらい走ると着く。観光バスが通れるような道ではなく、8人乗りくらいの中型車でしか入れない。

 その広大な草原には、太平洋からの横殴りの荒(すさ)ぶるような冷たく強い偏西風が吹き荒れている。その寒風の凄まじさは、10分と立っておれないほどの寒さと強風で、一瞬、常夏のハワイにいることを忘れさせる。この強烈な偏西風の中に、日本のTVコマーシャルでも有名になったM電機が建設した風力発電所がある。高さ20mくらいの塔の最上部に長さ10mくらいの4本羽あるいは2本羽のプロペラが付いた風力発電設備で、まるで草原の中から恐竜が首をもたげたような異様な格好をして立っている。

 発電設備というから飛行機のプロペラのような勢いで廻っているのかと思っていたが、そうではなかった。プロペラの塔がだだっ広い草原の中に40基ばかり整列して並んでおり、直立出来ないような強風を受けて、プロペラがブワッ、ブワッという鈍重で不気味な音を立てて緩やかにゆっくりと廻っている。強風に比べれると余りにゆっくりとしたプロペラの回転は異な感じを受けるが、ここで発電された電力は近隣の町に送電しているのだそうである。

 カラエ岬の近くには、砂が緑色をした緑砂海岸green sand beachや黒砂海岸black sand beachがある。緑色の石は、溶岩の中に含まれている宝石のような、直径が1mm〜数mmの綺麗な結晶物である。水晶のように大きくはないが、水晶の一種だろう。ペリドットという名前が付いている。それが太陽の光を反射して澄んだ黄緑色の美しい光を発する。目を刺すような吃驚するくらい強い光である。ガイドのケビンの話では、オアフ島のダイヤモンドヘッドという名称は、この緑石を見た白人がダイアモンドと間違えて名付けたものらしい。しかし、残念ながら石が柔らか過ぎて宝石にはならないそうだ。

 黒砂は溶岩が砕けて粉化したものである。また、黒砂海岸は海亀の野生地でもある。亀に触ったら罰金取られるよとケビンに注意された。海亀は保護動物で、ハワイ島では甲羅に触っただけで罰金を取られるのだそうだ。アンタッチャブルという訳である。それを知ってか知らずか、海亀はのんびりと真っ黒い砂浜に温和な日光を浴びて目を閉じて気持ち良さそうに寝転んでいる。時々、うっすらと目を開けては、見物している人間どもをじろりと睨む。そしてまた一眠り。警戒心は全くない。平和な光景である。

 11号線に戻り、キラウエア火山公園に向かう。キラウエアの南部は今もなお噴火中の活火山で、火の神ペレが住むというハレマウマウhalemaumau火口はキラウエアkilaueaカルデラの中にある。小さな噴穴があちこちにあり、今も活発に強い硫黄の臭いを発して高温の噴煙を噴出している。数年前、白人の老婦人がこの噴穴に足を滑らせて落ち、酸欠で一瞬のうちに死亡するという悲しい事故があったそうである。その事故があってから、今は噴穴の周りに危険防止の手摺りが作られている。

Hale Maumau Volcano of Mt.Kilauea

 キラウエア噴火口の縁に「ボルカノ センター」がある。火口を一望できる休憩所になっていて、博物館とお土産店とレストランがある。博物館では、キラウエア火山の歴史や女神ペレの伝説を説明員が熱く語って呉れる。キラウエアの溶岩は水のようにサラサラした溶岩で、溶岩流は川の様に流れているそうである。その流水のような溶岩が火口の中で固まっている光景は、遠くから見ると、まるで凍った黒い湖のように見える。

 キラウエアの海岸部では、今も噴火し溶岩を噴出しているそうである。その光景を見るには、11号線のケエアウkeeauというところから130号線に入って溶岩台地を海岸部のパホアpahoaまで車で行き、1983年から今なお噴火しているカイムkaimu海岸までは、そこから2時間ほど歩かなければならないそうである。優に、コナやヒロから一日行程の観光である。

 11号線はコナから南下し、そして北上しヒロまで続くV字型の長いハイウェイである。キラウエアはカラエとヒロの中間に位置し、ヒロへの道は緩やかな上り坂と下り坂が続く。途中には前方が階段状に見える8kmの直線道路もある。その起伏のある道路をガイドのケビンはブレーキも踏まずに時速100km以上の速度で、4輪駆動車をジェットコースターのように上下させながら走る。

 前方に海が見えた。そこがオーキッド(蘭)の街ヒロだった。ヒロは、ハワイ島で最も古い港町でハワイ島最大の町である。それでも人口は5万人しかいないらしい。雨と気温に恵まれた熱帯雨林の町で、緑の豊かなオーキッドの最大の栽培地である。街中、至るところに赤青黄緑の強い原色の蘭の花が咲き乱れ、至るところにジャングルがある。近代的な住宅の直ぐ傍にジャングルがある風景は奇異な感がする。

 毒蛇やアナコンダのような蛇が出て来たらどうするんだろう?ジャングルがまるで庭の一部と化している家もある。ところが、ハワイには熱帯特有の色鮮やかな小鳥や花は溢れているけれども、毒蛇や毒虫が一匹もいないとのことである。それで、家がジャングルに隣接していても恐いことはないのだそうだ。

 アカカ・フォールakaka fallというハワイアン音楽の名曲としても有名なヒロ北部の「アカカの滝」を見る余裕もなく、ヒロからは200号線を山に向かって西へ向かう。200号線はサドルロードsaddle roadと呼ばれ、標高4169mのマウナロアと4205mマウナケアの鞍部を東から西へ突っ切るようにして走っている。

 鞍部は標高2000mくらいあるが、1700m〜2000mくらいの溶岩高原が延々と続く。途中、マウナケアの天文台に登る三叉路が一ヶ所あるだけで、外には一本の分岐もない。その大部分は草も木もない黒々とした溶岩台地で、もちろん、道路には街路灯も標識灯も一切ない。行けども、行けども、何もない。片側一車線の狭い道で、巨大なパーカー牧場の中を延々と走るただひたすらの一本道である。

 道路灯が一本もないために、夜になれば頼りになるのは星明りと車のライトだけという極めて危険な道である。そのために、レンタカー利用者は夜間に200号線をドライブすることは禁止されている。ハワイ島の星明りは影が出来るほど明るいらしいが、真っ黒な溶岩道路はやはり闇であることには違いない。それでも利用者が絶えないと見え、道路の脇には事故に遭った犠牲者を弔う真新しい花束がそこここに添えられて痛ましい。胸が痛む。

 パーカー牧場はアメリカ合衆国でも屈指の肉牛牧場である。911平方qというとてつもない広さで、オアフ島の3分の2くらいの広さがある。1847年頃、ジョン・パーカーという水夫が陸に上がって始めた途方もなく広大な個人所有の牧場だそうだが、数年前、直系は途絶えたらしい。

 ハワイ島のコナリゾートには、ホノルルのような都会の喧騒が全くない。人口も観光客も少なく、泥棒もいない安全な街は、気候も朝夕は涼しく昼間も温暖でのんびり寛げる。お土産もホノルルより若干安いように思うが、ホノルルほどにはマケては呉れない。品数が少ないのが難点である。ただ、コナ・コーヒーだけはハワイ島で買った方がよい。これまでオアフ、カウアイ、マウイ、ハワイの4島を訪れたが、ハワイ島が一番好きになった。そこには、オアフにはない一味違った自然のままのもう一つのハワイがある。


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