以久遠氏の Beauty,Business & Favorites   VOL.18 2000.05.01号 [ 毎月1日更新 since 1998.12.15 ]

倹にして倹ならず   

己に倹(けん)にして、人に倹ならず。之を愛という。

己に倹にして、人に倹なる。之を倹という。

己に倹ならず、人に倹なる。之を吝(りん)という。

 これは、東宮御学問所御用掛を勤め、主に倫理を担当し今上天皇に御進講した杉浦重剛氏が、大正12年ごろ自らが創立した称好塾において塾生に好んで語った古人の言葉である。己にも他人にも倹(つま)しい人はよく見掛けるが、己に倹(けん)にして、人に倹ならずという人は意外に少ない。大抵は、自分に利をもたらして呉れると思えば途端に倹ならずとなる人や、人前に出ると途端に傲慢になって威張りまくる人などばかりである。杉浦氏には、

   『己に倹ならず人に倹なる人になっちゃいかんぜ。なくてはならぬ人間に成ることを心掛けることぢゃね。どんな

    階級でもいい、その人が居なくては物事が渋滞して困るというような人に成ることぢゃ』

といった数々の名言がある。その名言の一部を紹介しよう。

   『まぁまぁ、悪いことは自分の身に引き受けることじゃ。』

   『何といってもこの日本に義侠の二字が亡くなったら駄目ぢゃね。』

   『命を投げ出してかかれば何でも出来る。金儲けなどもこの精神でやれば何でもないね。一通り二通りの勉強は必要

    ぢゃ。並のやり方ではいかん。』

   『皆、試験で忙しいぢゃろう。しかし、社会へ出ると毎日試験ばかりぢゃぜ。』

   『徳の人を才の人の上に置かなけりゃならん。昔は才徳兼備の人を太政大臣としたものぢゃ。そのような人がいない

    時はこの官職は空席にしたものぢゃ。』

 まさしく、その通りである。これらの杉浦氏の名言を聞いて、改めて耳に痛く感じる人も多いのではなかろうか。

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