電話のお客『誠に恐れ入ります。×月×日に是非お会いしたいんですが、ご都合は如何でしょうか?』
社長さん『ちょっと待ってください、秘書に確認しますから』
部門の長クラスともなれば、殆どの人が分刻みの約束に追われて行動している。電話も多い。特に社長さんクラスになると、自分のスケジュールが自分で管理できないくらい忙しい。中には面会しようと思っても、1ヵ月先でなければ約束が取れないというような社長さんもいる。出張もあれば、来客もある。突然の告別式案内もあれば、結婚式の招待も来る。社内外の膨大な量の文書にも目を通さなければならない。
そして、的確に素早く決裁をしなければならない。内容が不審であれば、担当者を呼んで内容の説明を詳しく聞かなければならない。テキパキと指示も出さなければならない。社長さんに限らず、誰でも守備範囲が拡がれば、忙しいことが良いという訳ではないが、正比例して責任範囲も増え自ずと忙しくなる。自分の仕事を処理する時間が足りないというのがトップクラスの人達に共通する最も大きな悩みなのである。従って、多忙な人ほど約束と約束の間に空いた少しばかりの時間を非常に大事にする。
このような人達に会う際は、この点を十分考慮して行動することが肝要である。従って、面会したいと思ったら、必ず予約をとるようにしなければ失礼になる。一般的には、訪問予約の電話を入れる時は用件を事細かく説明する必要はない。何故なら、細かく説明をしたいから訪問しようとしているのである。
電話では出来るだけ簡潔明瞭に、「○○の件でお伺いしたいのですが・・・」というくらいでよい。あまり事細かに詳しく喋ってしまうと、電話で用件が済んでしまうこともあるし、逆に「そういう用件なら又にしてくれ」と断られることもある。
訪問したら、面談に入る前に予め「お時間はどの位よろしいでしょうか」と時間を尋ねる方がよい。相手に好印象を与えるテクニックである。時間がないということであれば、簡単に自己紹介をして直截的に商談に入ればよい。 40 分くらいの時間が貰えるなら、会社紹介から商談へと通常のパターンを踏んで面談する。
面談は、用件を要領よく簡潔に済ませるようにし、結論を迫るような話し方は避けた方が良い。徒に不安感と警戒心を煽るだけで、いい結果は得られない。結論は、後日でもよいのである。却って、次回の訪問がしやすくなって好都合の場合もある。大事なことは、相手の質問に貴方が答えるような会話に導くことである。そうすれば自然と会話も弾み、「次はいつ来れるかね」という言葉が相手からすんなりと出て来る筈である。
自分や会社の紹介がダラダラと長過ぎるのはいけない。売り込みに来た会社の内容を詳しく知りたいと思っている人なんか滅多にいない。お客さんが知りたいのは、安心して買える会社か、商品に問題はないか、アフターサービスは大丈夫か、信用して買える営業マンか、の4点か5点である。一般的に、初めての訪問では、自社や自己紹介は 5分くらいで済ましたがよい。
本論が一番大事で 30 分〜 40 分を見込む。しかし、肝心の本論の説明が要領を得ず、何しに来たのか分からないような会話が最も拙い。波長の合わない商談をしておれば、100%次回は会って貰えないと思ってよい。巧く行く商談も、商談の拙さで折角のチャンスを潰しているのである。商談のシナリオは事前に十分考えておかなければならない。
締め括りに5〜10 分を見込むが、趣味や郷土などの軽い会話が弾むようであれば、訪問は成功であると思ってよい。印象に残る訪問が出来たことになる。次回は、気楽に訪問できる。大体、トータルで 40 分〜 50 分が妥当なところである。このくらいの時間で、初回訪問の目的は十分達せられる。これより長くても短くてもよくない。
初回訪問は、ビジネスライクにメリハリの効いた訪問を心掛けなければならない。ウジウジとした態度が最も嫌がられる。頃合いを見て、「来週、また伺います。お忙しい中、ありがとうございました」とビジネスライクにサッと引き上げて、キビキビした印象を与えてくることが大事である。相手に好印象を与えることが出来れば、次回には必ず商談は具体化する。何か、宿題や約束が取り付けられれば尚更申し分ない。
それと、帰り際に一言、「お忙しい中、お時間を頂き有難うございます」と会って頂いたことに対するお礼を言う癖は身につけておいた方がよい。癖になれば、わざとらしさが消えて感謝がにじみ出るような挨拶が出来るようになる。挨拶なりお礼を言われて、気分を悪くする人は一人もいない。好感を抱いて貰えるかどうかはともかくとして、礼儀として大事なことである。ある営業マンが何度訪問してもうまく行かないのが、他の営業マンが行ったら、商談がスムーズに成立した、というようなことはしょっちゅうあるが、原因は大抵こんな些細なところにある。
予約もせずに、突然、訪問することほど失礼なことはない。「この忙しいのに、この営業マンは何しに来たんだ」とお客さんに思われるのも最悪だが、忙しいためばかりではない。社長さんや経営者クラスには、礼儀や言葉使いに極めてうるさい人が多いので、飛び込みなどは失礼の極みである。中には、権威や権力指向の人もいるし、長幼と序列にこだわる人もいるので、礼儀作法には気づかい過ぎるほど気を使うくらいで丁度よい。
トップクラスの人ともなると、忙しい中からやっと作りだした貴重な自分の時間を邪魔されたことに憤りを露にする人もいる。仮に会って貰えたとしても、内心では「何という礼儀知らずの失礼な奴だ」と憤慨されていると思って、まず間違いない。忙しい時間帯に訪問すれば、誰でも招かれざる客であることには間違いない。やはり、何か掛けにくい事情があっても、ビジネスマンは訪問前の一本の電話を欠かしてはいけない。