Profile      以久遠氏の Beauty,Business & Favorites     VOL. 19/2000.06.01号

マーケッティングを楽しむ旅    

 サラリーマンになってから30数年、はからずも前半は経理、人事、法務、広報、工場経営、営業管理等の管理業務、後半がマーケッティング、一線営業、開発営業という形になった。早く言えば、前半は知識型で後半が人間型ということになる。特に、30歳代前半はドブ板営業の一営業マンとして靴を擦り減らす日々を過ごした。そして、その傍ら営業管理課を兼務し債権管理を担当したせいか、36歳頃からは赤字部門や足踏み状態の関連企業の再建や立ち上げを任されることが多かった。

 30代半ば頃、営業部門の管理者あるいは経営者として国内営業を見るようになってからの20数年は、東に西に全国を股に旅烏のような出張に明け暮れた。 この状況は57歳になった今も続いている。よくぞ病気もせずに、と我ながら感心しながら旅を楽しんでいる。

 最初に勤務した会社が北海道から鹿児島まで事業所があったこともあり、国内は北海道から沖縄まで日本中を隈なく駆け巡った。新規事業を担当した二年間は殆ど飛行機ばかりで、一年に36、7回利用した。今思えば大変な額の交通費を費やさせて貰ったことになる。それでもまだ訪れたことのない県が高知県、島根県、青森県と3県ある。

 営業といっても販社的な営業ではなく、総合商社的な営業であったためにテリトリーもなく、結構いろんな仕事を創り出すことが出来た。「あそこはまだ行ったことがないな。何か仕事はないかな」と考えることもないではない。そうなると、ビデオや本でその土地のことをつぶさに調べ研究する訳である。そして市場調査に出かけるのである。

 この市場調査的な仕事は公私にクリエイティブな作業を伴うので飽きることがない。商品を売るためには、土地土地の文化やその土地に住む人達の経済力や価値観、あるいは生活習慣等をつぶさに知らなければならない。ただ我武者羅に商品を送り込むだけで売れるというものではない。最終顧客と彼らに売る販売店の思惑によって大きく左右されるのである。従って、売るための仕掛けが絶対的に必要になる。

 何事も「魁(かい)より始めよ」の例え通りで、先ず敵を知ることから始めなければならないのである。敵を知ること、即ち土地を知ることから始まるのである。土地の人々は生活の糧を何から得ているのか、その土地にはどんな産業が根付いているのか、観光客は年間何人くらい訪れるのか、その土地の人達はどういう価値観をもって生活しているのか、閉鎖的なのか開放的なのか、春夏秋冬の気候はどうなのか、雪は、雨は、暑さは、等々……。

 マーケットリサーチの出張は、観光地も見て廻らなくてはならないし、土地の名産や名物を食したり手にとってみたりすることも大事なリサーチ活動ということになる。従って、実に楽しい。森を見てからじっくりと動植物を観察し、戦略と戦術を練るのがマーケッティングなのである。実に楽しい仕事であるが、マーケッティングの仕事は好奇心の旺盛な人にしか向いていないのである。偶に海外旅行もあったが、こちらは出張とは名ばかりの研修、視察、接待などの息抜き旅行ばかりである。業種が木材関連であったためヨーロッパと中東地区には機会がなかったが、アメリカ、ハワイグアム、香港、シンガポール、インドネシア中国など東南アジアを主に10数回である。

 海外だろうと国内だろうと、出張することには全く抵抗感はなかった。業務に関しては、スケジュールも細かく立てるし、自慢ではないが、約束の時間に遅れることなどは一度もない。忙しいお客さんが時間を割いて折角会って下さる気持ちを考えれば、遅刻ほど無礼なことはないからである。

 しかし、こと自分のこととなるとスケジュールを立てて旅することは好きではない。従って、今流行りのパック旅行というものは出来ることなら利用したくない。最初から興味の赴くままに見物したり食したり、といったブラリ旅にしておいた方がよいのである。元来、好奇心の強い性格であるので、訪れた先々で未知の土地への興味と探求心が湧いて来る。そうすると、スケジュールは却って邪魔になる。生来、ぐうたらな自由人的性格なので、時間の奴隷になることが嫌なのである。

 元々、若い頃から土地の文化とか土地の人間性などに強い好奇心があった。そのために、その類(たぐい)の本も結構読んだし、テレビのドキュメンタリー番組等もよく見た。従って、耳学問ではあったが、あっちこっちの情報を大量に入手していたので、どこへ行っても初めてという気がせず、土地と土地の人々に極めて自然に慣れ親しむことが出来た。その土地特産の料理を食べ、その土地の自慢話を聞いている内に、さらに探求心が深まり、段々その土地に興味が湧いて来る。

NEXT「以久遠氏と…」戻る
Enter From 検索  Update & Back-number index  Home  Tour  Gourmet  Culture  Business01  Business02  Business03  Profile