以久遠氏の Beauty,Business & Favorites      VOL. 20    2000.07.01号 [ 毎月1日更新 since 1998.12.15 ]

Thinking ,「考える」  

 考えることを放棄した若者が増えている。10数年前、プロ野球に「Thinking Baseball」を唱えた監督がいた。 残念ながらそのチームは監督自身が余り考える人でなかったようで、目論見通りの成績は残せなかったが「Thinking...」とは実にいい言葉である。

 詩人サミュエル・ウルマンが、「人間は考えることで成長し、考えることを放棄した時から老いる」と言っているように、又、哲学者パスカルが「人間は考える葦である」と言ったように、人は常に考えることを継続する限り成長し続ける。

 イギリス人のように行動する前に考えるか、イタリア人のように行動してから考えるか、あるいはドイツ人のように行動しながら考えるか、貴方がどのタイプの人間であるかによって思考のパターンは異なるが、いずれにしても、何事についても問題意識を持って日々を送るようにしなければならない。何事にも「ちょっと待てよ」と鋭敏に反応する感性を磨き、頭を傾(かし)げる癖を身に付け、暫しでも考える時間を持つことが大事なのである。

 しかし、いくら考えても、無い袖は振れない。下手な考え、休むに似たりで、乏しい知識からは貧しい考えしか湧いて来ない。「あいつは頭が良い」とか「あいつは発想がユニークだ」と他人に感心ばかりしていては駄目である。彼らは常に問題意識を持って些細な現象も見逃さずにいるからこそ妙案が浮かんで来るのである。知識が広く、そして深いほど、多彩な応用力と斬新な発想が豊かに広がる。妙案は豊富な知識と豊かな経験から生まれるのである。

 知識を得るためには、目から学ぶか、耳から学ぶか、いずれにしても大変な忍耐力と長い時間を要する。そして、深考しなければならない。しかし、自らが経験出来る範囲は狭く、自分の生きている世界と時間に限られる。従って、広く深く学ぼうとすれば古人の経験を本から学習する外ない。

 にも拘らず、残念ながら歴史に学ぼうとする若者が少なくなった。何か困ったことがあれば考えるよりもHow-To本から答えを探した方が手っ取り早いというマニュアル社会を象徴して、How-To本なら読むが「考える」本は読まないという若者が増えている。マニュアルの無い時代を迎えた今こそ、若者に「自ら考え、そして行動する」という「Thinking...」の訓練と機会を作ってあげなければならない。さもないと、子供のような大人ばかりの社会になる。

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