1999年11月、高校の東京地区同窓会が飯田橋のホテル・エドモントで開かれた。第一回生から第46回生まで400人くらいの出席者で、そこそこの広さの会場であったが、芋を洗うような混雑であった。その会場で、後輩たちを数名集めて講演会みたいな口調で力説していた第一回生の医学博士の先輩の次の言葉が強く印象に残っている。
「20世紀はヴィタミンの時代であった。ヴィタミンについては殆ど解明されたが、ミネラルについてはまだまだ不明な
点が多い。解明されるのはこれからで、おそらく21世紀はミネラルの時代となるだろう。」
ミネラル(mineral)とは無機物である。つまり、水銀や鉄などの「鉱物」を思い浮かべればよいが、一般的には、無機塩類の形で体内に摂取されるカルシウム・鉄・亜鉛・コバルト・マンガンの類を総称してミネラルと呼ばれているもので、有機体である生物が正常な生理作用を行なうのに必要な微量元素であると考えられている。特に、脳細胞の情報伝達機能の役目を果たしているシナプスにどんな作用を及ぼしているかが解明されれば、脳医学は格段に進歩するだろう。
特に日本人は、欧米人と比べると亜鉛とマンガンの摂取量が不足しているそうである。亜鉛とマンガンは組織の新陳代謝を活性化させる働きがあるようで、女性にとっては若さを維持するのに必要不可欠であり、男性には回春効果もあるらしい。と言って、即効性がある訳ではない。正確なことは今後の解明を待たなければならないが、漢方薬と一緒で、3ヶ月ぐらい経つとジワジワと効果が現れるというものらしい。
彼の話では、ミネラルは地球の内部から常に湧出しており、深海3000mくらいのところに自然のままで存在しているそうである。ミネラルの湧出ポイントは日本海溝にも沢山存在していることが確認されているそうで、地球的に見れば無限に存在するらしい。亜鉛もマンガンも重量元素であるから深海底に沈殿しているそうだが、そのままでは塩分含有量が多過ぎるので塩分を除く加工が必要となる。海に囲まれた日本にとっては貴重な産業資源となり得るかもしれない。
彼の話を聞いてから10ヶ月ほど経った2000年の夏頃、テレビコマーシャルが流れ始め、今では、大抵のスーパーの店先で「海洋深層水」とか「深層海洋水」といった名称のミネラル商品を見掛けるようになった。5,600mmlのものが600円ぐらいする。深海のミネラル水を工業的に吸い上げて、塩分を取り除いて飲み物にする訳である。
そもそもミネラルと言えば、海産物や海洋諸島の産物に多く含まれていることはよく知られている。沖縄の黒砂糖や砂糖黍(さとうきび)は健康食品として売られているし、播州赤穂の自然塩は高血圧にならないと評判だし、中国や南米の岩塩はむしろ高血圧を正常にする作用がある、と言ったことが言われているが、全く根拠のないことでもなかったようである。
何故、加工塩は高血圧の原因になり、何故、自然塩は血圧を降下させる働きをするのか。どうも、これにはミネラルが大きく作用しているらしい。