私が人事課にいて採用を担当していた頃の話である。10数年前は現在のような買手市場ではなく、一般企業では就職戦線が始まる6月くらいから学校回りを始め、8月に入社試験を行うくらいにゆっくりしていた。年に3ヶ月ほど集中的に学校を訪問すればよい時代であったが、それだけに就職部の先生方に忘れ去られる恐れがあった。従って、どうしても印象に残る訪問をしなければならないという訳である。
そこで考えたのが、毎週同じ曜日に、同じ先生を定期的に訪問するという戦術である。明治大学は毎週火曜日、法政大学も毎週火曜日、早稲田大学も毎週火曜日、駒沢大学は毎週水曜日、東海大学も毎週水曜日、慶応大学も毎週水曜日というように、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏の学校を区域別、訪問曜日別に細分化し、毎週欠かさず決まった曜日に訪れ、しかも同じ先生と面談することにした。その先生に先客があれば、時間はかかるがじっと待つ訳である。
これは、予期した以上に効果があった。2、3回の訪問で、大抵の先生が二言三言話している内に私を思い出して呉れた。ある大学の先生に、「今日あたり、お見えになるんじゃないかと思っていましたよ」と言われたときは、予期通りの効果に内心思わず拍手をしたくらいである。
この訪問方法が功を奏して、その年の就職シーズンの終わりには名刺がなくても(実際は必ず出すが)気安く訪問出来るようになった。お陰で、就職部の紹介ではあったが、採用したくても応募もなかったW大学とM大学等から数名採用できるようになった。
これは、相手が大体社内にいる人であれば、通常の営業活動にも十分活用できる印象的でかつ効果的な訪問方法である。複数の会社を定期的に訪問する場合でも、会社ごとに訪問曜日を決めておくメリットは沢山ある。例えば、毎週木曜日に訪問している会社があったとすると、相手は急ぎの用件でなければ「明日はAさんが来る日だな。来たら、あの件について相談してみよう」と心待ちにするようになる。苦もなく、ビジネスチャンスが増える訳である。