近年のマーケットの要求は、価格、機能、品質、利便性などのあらゆる面で益々尖鋭化し多岐に分かれて来ている。特に、パーソナルユーズ化と、高額なものと廉価なもの、高機能・多機能のものと単機能のもの、豪華品と普及品というように両極化傾向が著しい。特にIT関連である携帯電話の多機能高機能化は目を見張るものがある。
また、消費者の購買力の向上によって、従来は耐久消費財というジャンルに区分されていたものが、一時の用を足せば用済みの「使い捨て」消耗品のジャンルへと商品の性格も大きく変わって来ている。我々の子供のころは殆ど価値がなかった簡便性や利便性が、大きな商品価値を持ちはじめて来ているのである。
例を挙げれば、編集機能や再生画質を重視したプロ仕様に近いデジタルビデオと、レンタルビデオなどを再生するだけの再生専用ビデオ、高級一眼レフカメラと大ヒット商品「写るんです」に代表される使い捨てフィルムカメラ、ローレックスやオメガなどの高級腕時計と玩具のような 980円の腕時計、などなど。例を挙げたらきりがない。
消費者の用途と目的に応じて、品質と利便性が選択される時代となったのである。かっては一家に一台が常識であった耐久消費財が用途や目的に応じてパーソナル化し、あるいは一時だけの使用に耐えれば用済みというように、一見、無駄が無駄に見えない合理的な価値観の時代となっている。しかし、その反面で、地球的規模で環境基準が見直されて来ている。産業廃棄物を如何に少なくするか、リサイクル関連法も次々に登場している。
消費者の価値観の変化は、当然のことながらマーケットにも変化をもたらす。個人あるいは個々の企業の欲求に応えるカスタム化傾向、いわゆる商品の特化傾向の強まりである。ニーヅあるいはウォンツの尖鋭化とはマーケットの超隙間化を意味し、今風に言えば「マニアック」マーケットあるいは「オタク」マーケットの登場と言ってもよい。
そうなると、当然のことながら大量販売は期待できなくなる。マーケットの規模に合わせた少量多品種生産体制が必要になり、メーカーとしてはコストの低減化対策に頭を悩ますことになる。しかし、ニッチマーケットであろうとも、マーケットを地球規模で見れば大量生産を指向することが出来る。従って、日本全体とか世界を一つのマーケットとして見る発想が必要になる。
本来、メーカーとしては、マーケットの要求にピッタリ合致した品質と機能と数量を提供できれば、必ず売れる筈である。経営的には焦点が絞りやすくなったと言えないこともないが、実際は、価格の問題、流通マージンの問題、メンテナンスサービスの問題、付加機能の問題等、マーケットの先鋭化に伴ってどこまで対応するかなど新たな問題が発生する。
このように、マーケットウォンツが尖鋭化する中での商品戦略は、販売ターゲットの要求にピタリと照準が合った商品化が必須条件となる。これまで以上に企画力や分析力の優劣が企業の生命線を左右することになる。そういう意味で、マーケッティングの時代が到来していると言える。マーケッティング担当者も新商品を開発する技術者も、これまで以上にマーケットの現場へ足を運んで理論と実際の現象を検証する必要性が出て来ているのである。智と汗を滲ませて戦略を練る時代が到来したのである。