Profile  of  Mr.IKUO                     VOL. 27 / 2001.2.1号
−−短時間で親しくなる法−−

地図しむ       

 我が人生も半世紀を超えたが、日本国48都道府県の中でまだ足を踏み入れていない県がひとつだけある。四万十川と桂浜と坂本龍馬で有名な四国の高知県である。

 思い返してみれば大学を卒業してからの35年ばかりの間に、北海道から沖縄までよくぞこれだけ広範囲に動いたものである。大学までは東京より以北は行ったことがなかったので、殆どが社会人になってからということになる。自慢ではないが、我ながらよくぞ隅々まで足跡を残し得たものぞ、と感心している。これも、今までに業種の異なる四つの会社に勤務できたお陰だろうと思っている。業種が違うと、得意先の地域も異なる。

 殆どが会社の業務出張で、それも大半は営業時代である。最初の会社のときに管理部門のあとに営業を経験したが、その時の上司がユニークな考えの人だったので、実に優雅で楽しい出張をさせて貰った。タクシー代が請求し辛い時代であったが、彼は日頃から

   「地方の人とスムーズに親しくなるには、その土地の名産や名物などを知って、それらの話題から会話に入るのが最も良い。

    いきなり商談に入っても相手にして呉れる人は滅多にいない。そのためには、訪問する際、行きはタクシーに乗って運転手

    さんから事前に情報を仕入れて置くことだ」

と言い自ら実践している人であった。その理由は何かと言えば、

   「地元の情報に一番詳しいのはタクシーの運転手さんだ。会社の信用状況なんか、下手な興信所情報より余程正確だ。給料の

    高い会社か低い会社かくらいは直ぐ分かるし、真っ当な会社か、怪しげな会社かも的を得たサジェッション(示唆)を与えて呉

    れる。訪問する会社の良い噂も、悪い噂も、あるいはその土地の様々な話題も忌憚のない話が聞ける。予め運転手さんから

    地元の情報を手に入れた上で訪問すれば、お客さんの所に行っても会話も直ぐに盛り上がってあっと言う間に親しくなれる」

という訳である。お陰で、タクシーが自由に使えたのはありがたかった。

 従って当然のことながら、堂々と土地の名産を食べ、名所を見物し、その土地出身の有名人についても調べることになる。それも、大半が会社の費用で…。要は、「その土地の文化と歴史に接することがその土地の人間性を理解するのに役に立つ」のである。彼は大分県の国東(くにさき)出身で東京の大学で学んだ人だが、案外、自分が田舎出身であったために自らの体験から体得した「お客さんと素早く親しくなる法」だったのかも知れない。

 その会社に20年近くもいたせいで習い性になったのか、今でも新しい土地へ出張すると、先ずホテルのフロントや駅の観光案内所で観光パンフレットや市内地図等の資料を集めてしまう。そして、たとえ30分でも閑があれば、博物館や美術館などを訪れたり、名所旧跡を見物したりする。そして帰宅してから、ゆっくりと時間を掛けて地図を眺める。そうすると、いろいろなことが見えて来て、その土地に更に大きな愛着が湧いて来る。

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